AM ZOOM TOPCOR 28-50mm f3.5-4.5
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76年のRE200から始まり、翌77年にRE300へと発展し、交換レンズも一通り揃えた「N」シリーズであるが、これをKマウント化してRM300を海外で発売したのが78年である。同時にNシリーズレンズもAMトプコールとして生まれ変わったが、面白いことにここから「MC」の文字が各レンズのネームに加わり、マルチコーティング化されたことをアピールしていた。しかし、70年代末は各社から高性能なコンパクト一眼レフが矢継ぎ早に発売され、それらのどれもが明らかにトプコンRE/AM300よりもモダンで垢抜けたもので、AEやワインダーの装着は当たり前の時代となっていた。当然、東京光学でも低価格路線によって海外でそこそこ売り上げを伸ばしたこのカメラでは、競争力を急激に失っていったことは分かっていて、新たにペンタックスME/MXやキヤノンAE-1の人気ぶりを横目に、コンパクトで魅力的なAE一眼レフを開発している真っ最中であった。それがようやく形となって発表されたのが81年で、トプコンAM-1と名付けられた。残念ながら、せっかく完成した高性能な小型一眼レフであったが、東京光学では35mmカメラからの撤退が決定し、順次駒村商会からの依頼で生産を細々続けていたホースマンのシリーズも、少し後のER-1からはカメラ・レンズ名ともにトプコンの文字を消してしまった。このような状況下で、撤退寸前に売られていたのがこのAMズームトプコール28-50mm f3.5-4.5である。RM300が最後まで国内販売されなかった結果、このレンズも国内では出回らなかった。海外では色々名を変えたものが出ているが、それもトプコン時代のものか、その後のものかは分からない。
ところで、AM-1やAMトプコール各種の図面は、そのまま下請けのシマ光学(シィーマ)に譲渡され、すぐにシムコ(CIMKO)LS-1として国内でも販売された。主に、若年層を狙ったもので、デザインはAM-1と全く同じ引き締まったものであったが、やはりシムコとなると、当時はタムロン・コムラノン・トキナー等の下に位置するイメージで、頭角を現してきたシグマやトップマンなどと同列の安価なズームレンズのメーカー的に見られがちであった。しかし、自社銘柄でしっかりしたカメラを世に出した点が、他のレンズメーカーと異なるものの、やはり国内での競争力はほとんどない。良いカメラも名前次第で潰される典型的な例である。
話をAMトプコールに戻すが、このレンズは35mmカメラ用交換レンズとしては事実上最後のものになる。前にも述べたが、国内販売されなかった結果、ほとんど知られることなく終わったため、あくまで国内最後のものは35-100mmになる。それにしてもこのレンズはとてもコンパクトで使い勝手が良いので、東京光学の撤退は返す返すも惜しいことをしたと思う。
レンズの構成は9群9枚で、フィルター径は55mm。最短撮影距離は50cmで、これは28mm側でも50mm側でも同じである。ズームは回転式で、50mm側に回して行くと鏡胴が短くなるが、40mm付近で一旦長さは変わらなくなり、最後にほんのわずかだけ伸びる動きを見せる。コンパクトな中に複雑な動きをする筒状のカムが入っているのだろう。残念ながら、現在手元にレンズ構成図はないが、後のMCシムコ28-50mmと全く同じなので、80年代半ば頃のカメラ雑誌等で見られるかも知れない。
MC表記があるが、コーティング自体は当時の他社のものと異なって淡い印象である。色合いは青系が強かったREトプコールNシリーズと異なり、アンバーを中心に、シアン、オレンジが見える。それにグリーンが加わり、見る角度で色々様変わりする。この甲斐あってかどうかは分からないが、実際に使ってみると、かなり発色が良く、場合によってはまるで絵の具で塗りたくったようなきつい色になることもある。赤味が強いフィルムではそれが助長されるので、要注意かも知れない。解像力は周辺部で落ち気味だが、中心部はとても良く、実用上充分である。ただし、広角から標準までカバーするフードがないので、マルチコートされているとは言え、光の角度によってはゴーストがはっきり写り込んでしまう。
このレンズでの街中スナップはとても軽快で楽しい。RM300ばかりでなく、シムコやチノン、その他のKマウントAEカメラでも使ってみたくなるレンズである。
9群9枚構成 画角76〜46度 最短撮影距離50cm 回転式ヘリコイド フィルター径55mm
長さ×最大径63×63mm 重さ276g 価格不明
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