トプコンクラブ(TOPCON CLUB)〜トプコンよもやま話1

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 ズームトプコールの話1
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 ここ数年、クラカメブームの影響か、再びトプコールの優秀性が見直されている。トプコンのカメラやレンズがさまざまな雑誌に採り上げられ、それまでトプコンに見向きもしなかった人々も興味を抱き、中古カメラを購入する際の対象として見るようになった。これは、もともとトプコンを愛して使っていた我々「トプコン党」の者にとってとても喜ばしいことであり、かつ晴れがましいことでもある。50〜60年代の「アサヒカメラ」や「日本カメラ」等のカメラ・レンズレポート記事を読むと、その性能の優秀性を云々する前に、トプコンは高い技術力を持っているという大前提のもとで評価がなされていた。事実その頃の東京光学の実力は、生産能力や販売能力を除けば、ニコンにも勝るとも劣らないものを持っていた。シムラーやトプコールの名は日本中のカメラマンに認められ、日本初のスプリットイメージスクリーンを採用したトプコンR、初のペンタプリズムを用いた本格的レンズシャッター式一眼レフ機であるPR、さらには世界初のTTL開放測光機REスーパーから、これまた世界初のTTL−AE機となるユニなど、トプコンが一機種を出すたびに「初」の文字が付いてきたのである。レンズを見ても、57年にはすでに300mm f2.8や、135mm f2等を発売しており、REスーパーの発売された63年には国産では初めてのレトロフォーカス超広角レンズ25mm f3.5を完成させている。一目置かれるのは当然のことだろう。

 しかしこれが60年代後期になると、他社も同じようなスペックのモデルを次々に出すようになり、営業の弱い東京光学は次第に後退するようになる。全販売シェアのほんの数パーセントすら確保することが難しくなっているという状況下、以前のように次から次へと新型機種を開発する余裕もなく、マイナーチェンジによって生き長らえるようになった。そこで取った打開策がマクロ撮影の普及であったことも失敗要因だったかもしれない。確かにトプコンには早い時期からマクロ関係のシステムが充実していたが、それを求める層は果たして全体の何パーセントであったろう。そして、どこまでそれを普及できると読んだのだろうか。もう一つ、フラッグシップ機であるREスーパーのいかついデザインも当時の日本人に受け入れがたく思われていたようだ。デザインの統一から、65年発売のRE-2も角張っていたが、これもあまり受け入れられなかった。REスーパーのように優れたモデルでもないので、結果としてとても短命な機種となってしまったが、もしこの時後のユニレックス路線のデザインで行っていたら、どうなっていただろうか。

 こうして70年代を迎え、細々とカメラの生産を続けていたが、もうこの頃になるとかつてのトプコン神話は崩れ、各誌のテストレポートでもかなり叩かれるようになっていた。スーパーDMで初めてワインダーの発想を世に問うてもほとんど見向きもされず、もはや万策尽きた感さえ漂っていた。最後に普及機のRE200・300を発表したところで焼け石に水、Kマウントに移行しかけたところでカメラ業界から撤退することになるのである。

 80年代になると各誌からトプコンの文字は消えてしまい、この頃になって本格的なトプコンユーザーとなった私はちょっと曲者かもしれないが、ともかくほんの時たま見られるトプコンの文字を、目を皿のようにしてながめていたものである。そこで古本屋で70年代のカメラ雑誌を手に入れ、レンズなどのレポート記事を読むと、憤りさえ感じるほど低い評価がなされていたりするのだ。

 そうこうしているうちに90年代に入ってみると、いつの間にかクラカメブームが押し寄せ、各誌で再びトプコンの記事が見られるようになったが、その内容はあたかも60年代に戻ったかのようにトプコンを賛美するようなものが大半を占めている。これは当然といえば当然で、以前のように単に表面的な解像度や色調、コントラストを分析して評価するのではなく、実際に自分が使ってその優秀性に気付いたプロが採り上げるのであり、悪いイメージのものは文章にならない訳である。もちろんトプコンをあまり高く評価していない人もいるだろうが、そうした人達の声は今ではわざわざ表に現れないのであり、ある意味で公平さを欠くような気もする。したがって近年の「クラカメ賛歌」的な記事の全てを鵜呑みにするのは危険であるとも思える。それはともかく、誌面に現れるということは、その分トプコンの素晴らしさを認める専門家がいるということであり、この点は素直に受け止めて何ら問題はないし、とても喜ばしいことであろう。70年代のカメラ雑誌のテストレポートはレンズの開放でのシャープさを妙に重視し、ボディの取るに足らないようなところにまで目が向けられていた感があるが、「ゴーストやフレアーが出なければ最高のレンズだ」、「ワインダーの音がよければいいカメラだ」という訳でもあるまい。多少の使い勝手の悪さは、人間の方で柔軟に吸収してしまうものであり、そう大げさに書き立てなくても問題はないのではと思っていた。そして、本当のカメラのよさとは、その人が使っていていつまでも手放したくないと思うようにさせるものがあるかどうかにかかっているのではないかとも思っていた。トプコンにはまさにこうした思いにさせるものがあると実感していたが、そうした自分なりの考えが、ここ数年のトプコン関連の記事の多さによって証明され、長い拘束から解き放たれたように晴れ晴れとした気分である。

 ところで、最近の記事に採り上げられるレンズは58mm f1.4、300mm f2.8、20mm f4等、ほとんど単焦点レンズばかりだが、REトプコール中たった二本のズームレンズも興味深い存在である。その第一はREズームオートトプコール87-205mm f4.7で、69年に発売されている。全てのトプコールが元の値を上回るようになった今日、このレンズだけは未だにリーズナブルな値を付けている。プレミアがつくほどのレンズではないと言ってしまえばそれまでだが、実はこのレンズにはマニア間では有名ないわくが付いているのである。

 このレンズの発売されていた頃、各社ともこぞって望遠系ズームを生産していたが、そこに表面的なスペックこそ違え、レンズの構成枚数からそのデザイン、長さや口径などがほぼ一致するレンズが、異なる二社からも発売されていた。その一つはペトリズーム85-210mm f4.8で、もう一つはサンズームYS85 85-210mm f4.5(サンオートテレズーム85-210mm f4.8も実は同じ)である。これらは、トプコールと全く同一のレンズ構成をとっている。焦点距離が違うものの、画角の面から見ると同一で、この違いは営業政策上のものであろう。明るさの違いはコーティングなどの影響かもしれないが、これも営業政策がからんでいるのかもしれない。サンとペトリのレンズを見たことがあるが、そのコーティングの色はそれぞれ違っていた点から考えると、設計は同一、生産は別ライン行っていたものと思われる。当時の実写レポートを見る限り、その性格も三者三様で、トプコールは前ボケが強く、サンズームは後ボケの強い傾向が見られる。ペトリは周辺部の流れが強いようだ。平面チャートのレポートではどんぐりの背比べのように感じられるが、何もそれはこの三本だけではなく、当時の全社のズームがそうだと言える。

 サンズームやペトリといったメーカーのイメージからくるのか、単に純トプコン製ではないという意識からくるのか分からないが、このレンズがトプコンファンから敬遠される理由の大きな一つにこうした事実が存在するのは明白である。ただし、それだけで葬り去られるのは惜しい気のするレンズである。もちろん現在のズームレンズに比べれば解像力の点で一歩劣るかもしれないが、だからといって決してシャープネスに不満があるわけでもない。そこそこシャープで繊細だが、温かい調子の線の軟らかさも感じられる。そして、よく言われるトプコール特有の立体的映像の描写力の優秀さも併せ持っている。平面チャートのデータでは、中心部の解像度は高いのに周辺部では低く、平均するとまあまあといったものになってしまうようだが、反対にこれが立体感を生み出しているのかもしれない。色調に関してはどちらかというと冷色系の部類に入るようだが、最近の優れたフィルムを使う限りどの色も鮮やかに表現できるので、これをとやかく言う必要もあるまい。全てはフィルムメーカーの努力の賜物として感謝しなければならない。

 それはともかく、私がこのレンズを好んで使うもう一方の理由に、その使い勝手のよさが挙げられる。細身で軽量、ピントリング・ズームリングともとてもスムーズで、これも軽快な印象に貢献している。ただし、マウント部の近くに設けられた無用の三脚座や、各リングの幅の狭さは欠点であるといえる。しかし、こうした欠点は、このレンズはトプコールであるという意識が吹き飛ばしてしまう。まあ、ファンの意識とはこんなものだろう。

【追記】REズームオートトプコール87-205mm f4.7は、基本的に東京光学で設計された光学系に、やはり東京光学でデザインされた鏡胴を持つが、ズーム機構のカムの問題から、より安価に作れることから生産はSUNに受注したそうである。光学系もその際に見直されている可能性があるが、いずれにせよ東京光学の血が流れたレンズなのである。

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8群13枚構成 画角12-28度 最短撮影距離250cm 回転式ヘリコイド フィルター径58mm
長さ×最大径165.5×65.5mm 重さ710g 価格66,570円(79年当時)

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