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標準レンズでの撮り比べに続き、今度はUVトプコールとコーワRシリーズの交換レンズでの比較をしてみたいと思います。ただし、UVトプコールは全て揃っているのですが、コーワは100mmレンズだけ持っておりませんので、これについては比較はできませんでした。撮影やその他の条件は標準レンズの時と同じです。
ところで、UVトプコールはレンズを初めて全群交換式にした63年のウィンクミラーSからになります。これより前の2機種、ウィンクミラーと同E型はレンズ固定式ですが、レンズの名前自体は既にUVトプコールとなっていました。しかし、あくまでここで採り上げたUVトプコールとは、交換可能なタイプを指しています。またボディはユニレックスを使いまして、標準レンズもユニレックス時代のものを使いましたが、135mmにもユニの頃とユニレックスの頃とで設計が異なるものがあり、それらは両方ともテスト撮影しました。これに対し、コーワの交換レンズはSERの時代からで、これはSET-R2まで変わりがなかったものと思われます。
上の画像は、左手前からUVトプコール28mm F4白鏡胴、左後ろが同100mm F4、2列目手前が28mm黒鏡胴、後ろが後期135mm F4、3列目手前が35mm F3.5、後ろが135mm前期型、4列目後ろが200mm F4になります。早期に出た35mmだけF3.5ですが、後に交換レンズの明るさは皆F4に揃えられました。これはトプコンのUVマウントではREマウントのようにレンズ側からボディに開放値を伝えて自動セットさせる仕組みを持たなかったため、レンズ交換の際に使うレンズのF値をボディ側のマウント部にあるノブをずらしてセットしなければならず、できるだけ各レンズの明るさが揃っていた方がこの煩わしさから開放されることによる措置です。
次に4列目手前ですが、これはコーワR 28mm F3.5になります。5列目手前は同35mm F2.8、後ろが135mm F4、右端が200mm F4です。本来ならこれに100mm F3.5が加わりますが、残念ながら所有してませんので、UVトプコールとは比較できませんでした。
コーワもレンズの開放F値を手動でボディ側にセットし直して使いますが、トプコンとは発想が逆で、あくまで使い勝手よりも明るさを優先させた結果、標準レンズがF1.8やF1.9、交換レンズがF2.8、F3.5、F4と言う具合にバラバラになっています。その割りに135mmや200mmはF4なのに随分口径の大きい重たいレンズになっていますが、これはマウント部にレンズシャッターユニットが収まる関係上、レンズの後玉には外径で最大22mmまでしかスペースがなく、必然的にそれより小さな後玉を使わないといけません。つまり、口径の小さな後玉に対して、いかにして光量を確保するかと言うことになって、コーワの望遠レンズは前玉を大きくして光を多く取り込んでいる訳です。広角レンズは元々レトロフォーカスタイプなので、後玉は小さくなるのが当然で、設計の時点で無理なくF値を3.5以下にすることができます。それにしても、同じF値のUVトプコール135mm(後期)や200mmとコーワの135・200mmで、なぜここまで大きさが異なるのでしょうか。実は、トプコールは後玉の口径を稼ぐために、筒を最大の22mmまで広げ、なおかつ肉厚の薄いものを使ってできるだけ鏡面の面積を稼いでおり、その分前玉を小さくできるようにしています。コーワRは後端の筒の口径は21mmで、しかも筒の厚味が多少あって玉の面積はどうしても小さくなってしまいます。そのためにとてもF4クラスの明るさとは思えないほど大きなレンズになってしまった訳です。また、レンズフードが引き出し式のUVトプコール135・200mmに対し、外付け式のコーワRは口径に応じた巨大なフードを別に携行せざるを得ず、使い勝手は明らかにUVトプコールに軍配が上がるでしょう。
では、最も重要な写りはどうなのか、チェックしてみましょう。 |
《撮影条件》
使用フィルム〜アグファVista100(カラーネガ)
シャッタースピード〜1/250秒 絞り〜f8ないしf11
現像〜ナニワカラーキット データ取り込み〜EPSON GT-X750(フラットベッドスキァナー)
解像度〜48bitカラー・解像度3200dpiでスキャンして520ピクセルに縮小+アンシャープマスク&縮小せずに部分的に520ピクセルの大きさでトリミング
コーワRレンズで撮影した頃には若干日が傾き、廃校舎正面の壁面が全体で日影に入り、他との描写の比較は、どのカメラも日影になっているところ(廃校舎の左側面や画面右の赤レンガタイルの建物等)や日が当たっているところ(中央やや左側の白っぽいマンションや丘の上の様子等)を見て行なっています。 |
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【28mmレンズ】
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1:UVトプコール28mm F4
影の角度からして西日になってから撮っているためもあって、バックの白いマンションでは白が飛び気味になってます。色合いは50mmと同様、中庸で良い感じですが、アグファのネガは元々発色が強めに出ますから、フジカラーではこうはいかないでしょう。
像の歪みもあまり感じられず、シャープネスもなかなかです。四隅の光量低下はf4でわずかに見られましたが、f5.6以上ではほぼなくなり、ご覧のf8では皆無と言っても良いレベルになります。
ただし、3200dpiで取り込んで左端のマンションのタイルを見ると、上下で放射状にうっすらと流れたようになってました。
それにしても、50mm F2もそうでしたが、日陰になる中央右側にある赤レンガの建物の色が潰れることなくきっちり再現できているのは立派ですね。さすがにフラットベッドスキャナーでの取り込みですから、遠景は甘く再現されてしまいますが、他のレンズも皆同じ条件なので、その点を考慮して比較しないといけません。。 |
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なお、画面中央部に左のマンションから右のビルの文字の部分にかけて、模様が写ってしまいましたが、これは画像を取り込んだ当時、フィルムのカーリングが強くてスキャナーのガラス面に触れてしまって現れたニュートンリングです。レンズの実力とは全く関係のないものですので、ご了承下さい。 |
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2:コーワR 28mm F3.5
これも50mmと同じようにマゼンタが強めな色合いになっています。フジフィルムではもっと冷色の強い描写になります。
コントラストははっきりしていて暗部ではつぶれ気味になりますが、決して全てが暗くなるのではなく、それなりに像を結んでいます。
シャープネスはしっかりしていて、UVトプコールと甲乙付けがたいでしょうが、遠景を見る限り細いアンテナが色飛びのためにはっきり写ってくれません。また、廃校舎の壁の色がUVトプコールのように赤味がかっておらず、かなり青が強いレンズかと思いきや、空の色はかえってUVトプコールの方が青々としています。やはり諧調の点で一歩劣るためにこう見えるのでしょうね。
四隅の光量低下が結構見られますが、これは太陽の位置から来るものではなく、このレンズの特性でしょう。
また、左右両端の建物の縦線が外側に湾曲していて、そこそこ強目の糸巻き型の傾向が見られますが、やはり左端のビルのタイルや下の黒っぽい屋根は斜め上下方向でトプコール以上に強く流れていました。大きく引き伸ばすと癖が出てしまうレンズのようです。 |
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【35mmレンズ】
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3:UVトプコール35mm F3.5
UVトプコールの交換レンズでは唯一開放値が異なりますが、設計がウィンクミラーS時代のもので、当時はセレン式メーターによる外光式測光であったために当初開放F値の自動伝達はあまり強く意識していなかったのでしょう。TTL機のユニ・ユニレックスではレンズ交換の際にあらかじめ開放値をボディマウント側にセットして補正しなければならないのですが、これを忘れがちになるのを防止して、後のUVトプコールではあえて全て開放値をF4にしています。35mmだけは当初からF3.5でしたので、そのまま変更されずにIC-1の頃まで残りました。
ところで、描写はさすがに28mmと違って四隅の流れもなく、標準レンズとしても使えるレベルです。フードは標準レンズと共用の深いものですが、かなり手前に前玉があり、フード未使用だと光の影響を受けやすいので要注意です。
四隅の光量低下は多少出ていますが、コントラストはとても良いですね。しかも暗部が潰れることもなく、右下の植木等がきちんと再現されているのは立派ですね。遠景でも標準レンズのように奥の電柱の先がしっかり逆三角形に写っています。 |
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なお、中央から少し左のマンションの上部から左端の空にかけて色ムラが出てしまいましたが、これは現像時にできてしまったものです。もう一枚撮ってありますが、それは色ムラもなくしっかり写っていたものの、フィルムのカーリングがきつく、スキャナーのガラス面にフィルムが接触して、28mmにも出ましたニュートンリングが見られるので、それを避けてこちらをあえて使いました。 |
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4:コーワR 35mm F2.8
トプコールより一段明るいF2.8を採用したレンズで、当然使用範囲はより広がります。発色は28mmレンズと同様マゼンタの強い冷色系で、色鮮やかさではトプコールの方が鮮明です。しかし、小さい画像での全体的な鮮鋭度では、コントラストが強いコーワの方が一見勝っているようにも見えますね。ただし、四隅の描写はボケたようになってしまい、どうも周辺部はこのレンズも弱いみたいです。空を見れば一目瞭然ですが、中央部の光量に対し、明らかに左右で低下し、その分しっかりした青空が再現されています。レンズの設計が中心部に重点を置いたものになっているのでしょう。
色合いはイエロー系の赤味が強めなトプコールに比べ、前述の通りコーワはやはりマゼンタ系が強く、赤味もその傾向でワインのような色合いになりますが、アグファVista100でこれですから、富士のネガフィルムでは相当きつい紫色が出るかも知れません。
暗部の描写は28mmと違って大変立派に再現されていますが、遠景の電柱の先は飛んでしまいほとんど見えなくなってしまいました。一番奥に写る丘の上の建物も、UVトプコールと比べてはっきりしていませんね。 |
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同じ35mmでも、コーワの方がトプコールよりも画角が広くなっているのは注目すべき点ですね。写しているところは全く換わらず、フィルムのコマもいっぱいまで取っていますから、条件は同じなのですが、左右の建物が写り込む度合いはコーワの方が多くなっています。コーワが32mmくらいなのか、トプコールが37mmくらいなのかは分かりませんが、とにかく画角がより広角になっているコーワR 35mmは、ちょっと標準レンズ的な印象のUVトプコール35mmと違って、広角レンズらしさが感じられますね。 |
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【100mmレンズ】
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5:UVトプコール100mm F4
さすがに中望遠でF4と言う明るさのレンズだけに、後玉が小さくならざるを得ないレンズシャッター式一眼レフの交換レンズといえども、あまり無理のない設計が可能だったのでしょうか、四隅まで均一にシャープな画像を見せてくれます。
周辺光量は若干落ちるのが欠点ですが、像の流れや湾曲等の乱れはほとんど見られません。全体的にはコントラストも発色もはっきりしていて具合がいいですね。その色合いも他のUVトプコールシリーズと統制が取れていて、このレンズだけ異なる色合いを見せることはなくその点でも大変具合が良いですね。
望遠だから遠くが写るのは当然にしても、電柱の先の横棒に細かい電線のポイントがいくつもある様子がきっちり写り込んでいますし、丘の上の建物の窓が横に並んでいるのがはっきり見て取れます。REオートトプコール100mm F2.8が22,300円だったのに対し、このUVトプコール100mm F4は9,800円と、価格的には非常に安価でしたが、実力的には全く負けていないものを持っていました。 |
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【135mmレンズ】
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5:UVトプコール135mm F4前期型
1964年発売のトプコン・ユニの発売時に登場したかなり口径の太いレンズで、前玉が大きい割りに後玉の小ささからF4と言う暗いレンズになっています。それでも冒頭で述べた通り、コーワのものよりも一回り小さい大きさです。
コーティングは2段階のアンバーコーティングとシアン系のコーーティングを施した玉が用いられていますが、どのコーティングもキツイ感じの色合いではありません。
反対にこれで写した画像の色は強く出るようで、その発色はコーワのレンズのようにマゼンタがかったようなイメージです。一見、この強い発色にダマされそうになりますが、解像度はさほど高い訳ではないようです。左端中央に見える丘の上の建物の黒い台形の屋根を拡大画像で見るとはっきり分かるのですが、ビシッとした線は後期型のようには出てくれません。100mmの方がかえってすっきり解像している印象です。
レンズフードはコーワと同じ外付けタイプですが、普段はフードを逆さにして鏡胴を包み、その上からレンズキャップが付けられるようになっていて、携行性も良く考えられています。 |
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7.UVトプコール135mm F4後期型
こちらのレンズはユニレックスが発売された時に再設計されて発売されたレンズで、前期型に比べてかなり細身になっています。これはREオート・トプコール135mm F3.5に似たデザインで、REオートと同じく引き出し式フードが内蔵され、使い勝手が大幅に向上されました。
コーティングは他のトプコールと同じくやはりアンバーとシアン系のものですが、見た目にとてもアンバーが濃い感じです。ちょっと強目なUVトプコール28mmよりも一層きつい感じの色です。
写りは非常に高い解像度を誇り、周辺部までかなり鮮明に写ってくれます。
縮小画像では確認が難しいでしょうが、右端の丘の上の葉のない木の枝や電線までしっかり描写していました。
ただし、四隅の光量低下は旧型より顕著に出てしまい、前玉の大きさを押さえた結果かも知れませんが、この点がとても惜しいですね。
発色は71年のカメラ毎日の「レンズ白書」で「とにかく黄色が多すぎるレンズ」と書かれていましたが、実際使っていてそんなことはほとんどありません。かなりナチュラルな描写で、REオート・トプコールもタジタジの実力を持っています。 |
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8:コーワR 135mm F4
非常に太くて重たいレンズで、前玉は67mmのフィルター径からもお分かりの通り、F4級の135mmとしては最大のものと言えるでしょう。
コーティングはマゼンタとシアンのものが見られ、見る角度によってはマゼンタがアンバーっぽく見えますが、いずれも色の強いコーティングではありません。
解像力は拡大画像の建物の右角の写りを見ると分かるように、明らかにUVトプコール前期型よりもシャープな点で優れていますが、周辺部の解像度で見るとUVトプコール後期型には及びません。全体画像の左側にある丘の上の建物の写りを比較してもらえれば一目瞭然ですね。
反対に玉の大きさが功を奏しているのか、四隅の光量低下はほとんど見られません。この点ではUV後期型より良いのですが、発色が他のコーワRと同じ冷色系が強く、シャドーは潰れてしまう傾向が強いです。おかげで、両方とも日陰になる廃校舎左側の壁の折れ曲がりが、諧調をしっかり再現していたUVトプコール後期型に対し、こちらはただ黒っぽい感じでわずかに濃度が変化して見える程度になり、平面的に見えてしまいます。 |
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【200mmレンズ】
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9:UVトプコール200mm F4
ユニレックス時代のレンズで、大きさの割りに軽く作られているものの、やはり後玉の小ささからくる光量不足を前玉で稼いでいるため、大柄なレンズになっています。
後期の135mmと同様に引き出し式のフードを内蔵しているのは使い勝手の面で大変良好です。
描写は中央部でとてもシャープなのですが、さすがに無理があるのか、周辺部ではネムい感じになります。それに四隅の光量低下が顕著に出ていますが、これはレンズシャッター機の交換レンズゆえ、仕方ないでしょうね。
コーティングはアンバーが中心で、わずかに薄いシアンも見られます。当時のトプコール全体のものとほぼ共通ですね。
撮影後の発色はUVシリーズの中では最もマゼンタが強くなり、イエロー系の赤味ではなくなっています。どちらかと言うと前期の135mmがこれに近いでしょう。富士フィルムでは一層マゼンタが強くなるでしょうね。
シャープネスは全体的に良好で、f8以上では像の崩れはありませんが、開放やf5.6では四隅の解像度は若干落ち気味になります。拡大画像は左上の部分になりますが、コンクリの継ぎ目や屋上のアンテナの線等、良く再現されていますね。 |
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10:コーワR 200mm F4
このレンズはとても200mmには見えない横綱級の口径の前玉を持っています。何しろフィルター径が90mmですから、まるでF2のレンズかと思えるほどです。実際、大口径のRトプコール13.5cm F2と並べても遜色ないどころか、かえって大きい程です。おかげで、鏡胴部には三脚座が設けられていて、手持ちではこの部分の角が当たって少々持ちづらいです。やはりレンズシャッター機で200mm望遠レンズを作るのは無理がありそうです。
しかし、どでかい前玉の威力は絶大なのか、四隅の光量は比較的均一で、トプコールほど光量低下は起こっていません。
これに対し、日陰の部分は完全に潰れたようになって、右側はフレアーのためか霞んだようになってしまいました。フードは大きな専用の外付け式のものを使ったのですが、それでもこうなるのですから、逆光ではさらに悪い結果になるものと思われます。また、携行時にフードを逆さにして鏡胴に被せておくと、あと一歩深く入ってくれないために、そこからレンズキャップをはめられません。ユーザーへの細かい配慮はトプコンのように為されていませんね。 |
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