TOPCON CLUB - Test Report - MINION II vs MINION 35

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 テストレポート〜ミニヨンII対ミニヨン35
 TEST REPORT-MINION II vs MINION 35

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2Minion.jpg  東京光学機械が生み出した最初期のカメラにミニヨンのシリーズがあった。一方は戦前から作られた127判の蛇腹式カメラで、もう一方は戦後に作られた35mm判の全金属製カメラである。どちらもその名の通りとても小さく、実に愛嬌のあるカメラであるが、東京光学の製品らしく、見事なまでに精密感のたっぷりの本格派でもある。もちろん、レンズも優秀なトーコーが付いているので、その写りは当時のカメラの中ではトップクラスであった。今回はその127フィルムを使用するミニヨンII型と、135フィルムを使用するミニヨン35を比較して、その実力に迫ってみたいと思う。

Minioncase.jpg  左は127フィルムを使うミニヨンII型。1939年に発売され、戦後も作られた4×5判カメラである。レンズはトーコー・アナスチグマット6cm f3.5で、シャッターは精工舎のリヒトが装着されている。巻上げがI型後期のモデルから自動巻き止めになり、ファインダーもニュートン式が装着された。
 背面には月ごと・撮影条件ごとのおおよその露出換算表が貼り付けられ、これをケースの裏側の一部分を倒してすぐに見られるようにしているのは親切である。といっても、シャッタースピードがB・T・25・50・100しかない上、当時のフィルム感度を考えるとおのずと撮影場面は決まってきそうではある。
 このカメラの最大の特徴はフィルムを軍艦部を外した上面から入れてセットすることである。私が初めに手にした時は一体どうやってフィルムを装着するのか悩んだが、まさか上から入れるとは思いもよらなかった。正面から見てファインダーの左にあるボタンをスライドさせて取り外すようになっている。
 軍艦部のみならず、各部にレバーやボタンが付けられ、ワンタッチでファインダーや正面のカバーなどが開くようになっている。
 巻上げは初めに背面の赤窓でスタート点を合わせ、以降軍艦部後部のボタンを一度チェックしてストップするまでダイヤルを回せば自動巻き止めになる。

Minion35case.jpg  こちらは1948年にデビューしたミニヨン35のII期モデルで35Bと思われる。初期の35(後に35Aと呼ばれた)はシャッターボタンが軍艦部になく、レンズシャッターと直接つながった、鏡胴部に付けられていた。
 この35Bはまだ24×32ミリの日本判で、40枚撮りであったが、49年に発売された35Cでは一般の24×36ミリサイズに変更された。そのいきさつは皆さんご存知であろう。
 シャッターはセイコーシャ・ラピッドが装着され、B・1〜1/500と俄然高性能になった。またレンズはトーコー4cm f3.5が装着されている。実は「Toko」名のものにはコーティングがされていなかったようで、この後に出たミニヨン35Cの「C.Toko」からコーティングされるようになったとのことであるが、私のレンズにはしっかりとコーティングされている。どうやらB→Cの過渡期のモデルのようだ。
 巻上げは自動巻き止めであるが、シャッターチャージは別に鏡胴右のレバーを倒さなければならない。
 ところで、このカメラの全体的なデザインはライカコピー機のようであるが、そのサイズは全く異なりとても小さい。当時の国産ミニカメラとは比較にならぬほど精巧なので、手にした感触は結構ズシリとしている。

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 さて、この二つの写真では正直言ってこれらのカメラの実力は分からないだろうが、一応私の言葉で補っておきたい。まず上の写真であるが、これは今や唯一の既製品127サイズのクロアチア製モノクロフィルムを使った。ISO200なので、1/100秒が最速のミニヨンII型では正直言って晴天ではキツイ。当然最大のf22に絞り込み、1/100秒で撮影したが、当日は快晴の昼間であったので、ISO100でf11 1/500秒程度が適正であった。よってかなりオーバーしてしまい、何とかパソコンに取り込んで補正をかけて見られるようにした。これを見ただけでは階調も何もないコントラストの極端に強い印象であるが、実際はかえってコントラストにおいては弱い面を見せる。シャープネスはまずまずで、充分使用に耐えられるであろう。ただし、やはり繊細な描写を求めてもプリモJRやトプコン35Sのようにはいかない。あくまでも60年以上前のカメラであると思って使った方が良さそうだ。

 下のミニヨン35はイルフォードFP4を用い、ISO125で使用した。絞りは最大のf11で、シャッタースピードは1/250秒で撮影。若干オーバー気味になった。それにしてもこのカメラは実によく写る。現代のカメラとモノクロでは全く遜色なく使えるのではないだろうか。三枚玉のトーコーレンズであるが、かなり繊細な描写をしてくれるもので、シャープネスについてもUVトプコールを凌ぐのではないかとさえ思えてくる。実はさっぱり期待していなかったので、初めて使ったフィルムを現像してびっくりさせられたものだ。ただし、ボケの美しさは今でもさほど期待はしていない。描写についてもう少し知りたい方は、トプコンクラブの「フォトギャラリー」のページをご覧頂きたい。

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 トプコン一眼レフカメラで最も小さいPR(PR II)とのサイズ比較。PRも非常に小さいカメラだが、さらに二回りは小さいことが分かる。蛇腹のカメラは東京光学では後に大きなトプコンホースマンがあるが、ミニヨンと比較すると笑いが出てしまうほどの違いがある。しかし、フィルムサイズは1ランク違うだけであり、そう考えるとミニヨンというカメラは大したモノである。ミニヨン35にしても同じことが言え、ここまで小さな本格派の35mmカメラはなかなか他社にもないだろう。持った感じがいかにも金属のぎっしり詰まった精密感満点のカメラであるし、そのクリアーなファインダーを覗いただけで「おっ、これは本物だな」と一瞬のうちに期待を持たせる魔力を持った小さな巨人である。両者とも今となってはその存在すら知らない方がほとんどであるが、知ってしまった者を深みにはまらせる、小悪魔的なカメラでもある。

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