不思議なものでかつての東京光学は積極的にレンズを発売しなかった。トプコンRのデビューの時に、Rトプコール300 f2.8や135mm f2などの当時としては異常とも思える高速レンズを発売したり、REスーパーのデビューに合わせて国産初のレトロフォーカス超広角レンズとなったREオートトプコール25mmを売り出したりしたもかかわらず、60年代の末に20mmと500mmが登場するまでは25mmから300mmまでの品揃えしかなかった。その反面マクロレンズ等は充実しており、全体の本数はそれなりの数にはのぼったが。しかし、当時のニコンやペンタックスはどんどんレンズのラインアップを充実させていた時期でもあるし、やはり競争力の点でレンズのラインアップが少ないのは弱点になったことだろう。ここに取り上げる200mmレンズは、望遠系のレンズの中では、各社とも135mmの次に良く使われたレンズであると思うが、トプコンでは他の焦点距離のレンズよりもちょっと遅れて各モデルとも発売された。それに、せっかくトプコンRの時代にRトプコール200mmを作っておきながら、それを完全自動化することなく、別途REオートトプコール200mm f5.6という暗いレンズを作っている。なぜそのようなことをしたのかはっきりとは分からないが、ここではそうした歴史的な背景は別にして、単純に歴代の各トプコールの中で、200mmをカバーするレンズをテストして、それぞれの実力をチェックしていきたいと思う。
オートトプコール35mm f2.8
|
《撮影条件》
撮影した場所〜東京駅正面
日時〜2001年12月23日(日曜日)午後2時過ぎ
天候〜晴天(順光撮影)
《撮影機材》
カメラ〜トプコンR
フィルム〜イルフォードパンF、パーセプトール現像
各レンズとも三脚使用。ただし、レンズ側の三脚座は使用せず、カメラボディを三脚に止めておいた。 |
なお、画像は、Nikon Cool Scan III型を用い、600dpiで取りこんだ画像の上下をカットし、横600ピクセルに縮小したものをアップしている。縮小の際に像がソフトになるので、わずかにシャープネスをかけておいた。小さい方は縮小していない状態の画像の一部を切り取ったもの。画像全体の上部の時計の部分である。
フィルムをカットした際に先端にきたコマは、向かって左端がフィルムのカーリングのためにぼやけているが、それはレンズの性能とは無関係である。この程度のサイズの画像で大きく流れるようなレンズは戦前のレンズか単玉のようなもので、かなり拡大しない限り一眼レフ用の平均的なレンズでは有り得ない。出たとしても注視しないとはっきり確認できない程度のものになる。また、上下に一定の幅でぼやけていることからもレンズそのものの像の崩れではないことが分かる。この点をご了解頂きたい。 |
R TOPCOR 200mm f4
|
絞り〜f5.6
1/250秒
レンズフード使用
フィルターは未使用 |
シャープネス・階調の豊かさとも文句なし。左側上部、後ろの建物の屋上にある柵を見ると、全く崩れることなくはっきりと線が見られる。屋根の細かい筋も鮮やかに出ている。 |
RE AUTO TOPCOR 200mm f5.6
|
絞り〜f5.6(開放)
1/250秒
レンズフード使用
フィルターは未使用 |
全体として一歩Rトプコールに劣るが、ちょっと軽いブレが入っているかもしれない。このレンズはf5.6が開放なので、f8位で撮影しないとちょっとハンデが生じる。f8の画像はやはり良かった。 |
RE TOPCOR N 200mm f3.3
|
絞り〜f5.6
1/250秒
レンズフード未使用
フィルターは未使用
|
思いの他写ってくれたが、シャドーはつぶれ気味で周辺部がネムイ。ただし、左側の流れた感じはフィルムのカーリングによる。中心部のシャープネスは問題ないが、フードを付け忘れたのは失敗だった。 |
UV TOPCOR 200mm f4
|
絞り〜f5.6
1/250秒
レンズフード使用
フィルターは未使用 |
コントラストの強いレンズ。シャープネスも中心部についてはなかなかのものがあるが、ちょっとこのレンズもシャドーがつぶれ気味。しかし、レンズシャッター機としては文句ないだろう。 |
RE ZOOM AUTO TOPCOR 87-205mm f4.7
|
絞り〜f5.6
1/250秒
レンズフード使用
フィルターは未使用 |
ズームレンズなのに非常に良い。左側の画像の流れはフィルムのカーリングによるもの。シャープネス、階調とも文句ないレベルである。右の時計の部分では分の点すらしっかり読み取れる。 |
HI ZOOM TOPCOR 87-205mm f4.7
|
絞り〜f5.6
1/250秒
レンズフード使用
フィルターは未使用 |
これも大したものである。廉価版だけに若干画像が劣るかなと思いきや、そのようなことはほとんどなかった。シャープネスは最も高い気がする。コントラストが強めでシャドーがつぶれ気味なのが惜しい。 |
今回は平面的な画像になったので、ちょっとボケについてははっきり分からないが、Rトプコール200のボケの感じはなかなかソフトで良い印象である。この写真でもお分かりの通り、屋根などを見ていると本当に臨場感のある画像を作り出してくれる。しばらく後から出たREトプコールN200mmは冴えないが、使っていて問題のある程のものでもない。ズーム二本は思いの外良く写ってくれて、見事なものである。開放はちょっと弱いので、それに近いf5.6ではどうかなとも思ったが、その実力の高さを改めて知らされる結果となった。これまでサンレンズで設計されたもの(個人の図面を複数のメーカーが買ったものかもしれない)として嫌われたレンズであるが、あくまで東京光学で作られたれっきとしたトプコールで、お勧めの一本である。UVトプコールも135mm同様、結構シャープで力強い印象であった。ちょっとコントラストが強い傾向だが、このレンズも安い割に良いレンズであった。REオートトプコール200mm f5.6は開放での撮影になったのがきついところ。でもf5.6なのだから、Rトプコールよりは優れた画像を残して欲しかった。
私がこの中からベストな一本を選ぶとすると、Rトプコール200mm f4といきたいところだが、やはり便利なREズームオートトプコール87-205mm f4.7にしたい。皆さんはどうお感じであろうか? |
|