TOPCON CLUB (トプコンクラブ)〜トプコンよもやま話5 REオートトプコール黒鏡筒レンズ

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 トプコンよもやま話5 トプコール黒鏡胴レンズ
 
Talking about Black finished Topcor

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 REオートトプコールはご存知の通り、白鏡胴が標準である。これはトプコンREスーパーの開発の際、そのデザインに合わせて作られたもので、カメラの直線的なデザインと白鏡胴の金属的な雰囲気がぴったりと適合して、非常に強い個性を感じさせるものになった。たとえボディのデザインは基本的にREスーパーと同じでも、72年のスーパーDのクロームボディには黒鏡胴の標準レンズが付けられるようになり、これを白鏡胴のREスーパーと比べると、メカニズムは進歩しても、かえってメカニカルなイメージは薄れたような気がするものである。こう考えると、トプコンが白鏡胴のレンズを揃えたのは正解であったと思える。ただし、これも50年代のトプコンRやRIIでは似合わない。やはり、カメラボディのデザインとの調和が最も重要になることは確かである。
 REオートトプコールは基本的にRIIの時代のレンズである、FオートトプコールをREマウント化したものである。よって、そのレンズの設計は変わらないものが多い。鏡胴も大きく変わることはなく、バヨネット着脱式のフード装着用の爪の形まで同じである。ただ、絞りの向きが逆になり、距離目盛りが透明のプラスチックのカバーに覆われているくらいである。しかし、その色は全て黒で、これだけで随分違った印象を与えている。
 では、最初の白鏡胴トプコールがREオートトプコールかと言うと、実はそうではない。63年のREスーパーのデビュー前に、暫定的にRSという露出計を組み込んでいないモデルが発売されたが、これはREスーパーと同じデザインのボディであるので、レンズも白鏡胴のものが用意された。それはFオートトプコールとREオートトプコールの中間的なレンズで、TTL開放測光に連動する爪を持たない白鏡胴のレンズである。H-Fオートトプコールと命名され、萩谷剛氏に直接伺ったところ、もともと日立製作所による注文生産のものであったらしい。コーティングがFオートトプコールともREオートトプコールと異なり、マゼンタ系の色合いが強い。しかし、レンズの設計はやはり変わらない。
 基本的にREスーパーの誕生とともにトプコールレンズも白鏡胴化されていったのであるが、実はここにトプコールマニアを惑わせる原因があった。というのも、東京光学では少数のカメラのブラックボディに合わせて、黒鏡胴のREオートトプコールを生産していたからである。これについては後述するが、ここではひとまずオートトプコールからREトプコールNまでの全EX/REマウントのレンズを、以下の表にまとめてみることにする。焦点距離は、同一のレンズでも発売年度によってcm標示とmm表示があるが、ここでは便宜上全てmm標示に統一させて頂く。また、基本的にそのシリーズの発売された年度をもとに並べてあるが、各シリーズ中においては発売年度順ではなく焦点距離順に並べてあるので、その点ご理解頂きたい。

 さて、本題に入るが、左下の表の「Chrome *」の標示に注意して頂きたい。これは基本的に白(Chrome)鏡胴が中心であるが、黒(Black)鏡胴のものも作られたことを表している。REオートトプコールには超広角や超望遠レンズを除き、大半のレンズに白・黒両方の鏡胴のレンズが存在する。

各種トプコール 鏡胴色
オートトプコール
Auto Topcor Semi-Automatic
35mm f3.5 Black
58mm f1.8 Black
100mm f2.8 Black
Rトプコール
R Topcor
90mm f3.5 Black
135mm f2 Black
135mm f3.5 Black
200mm f4 Black
300mm f2.8 Black
300mm f5.6 Black
オートトプコール後期
Auto Topcor Autokinon
35mm f3.5 Black
58mm f1.8 Black
100mm f2.8 Black
Fオートトプコール
F Auto Topcor
35mm f3.5 Black
58mm f1.8 Black
100mm f2.8 Black
135mm f3.5 Black
H-Fオートトプコール
H-F Auto Topcor
3.5mm f2.8 Black
58mm f1.8 Chrome
100mm f2.8 Black
REオートトプコール
RE Auto Topcor
20mm f4 Chrome
25mm f3.5 Chrome *
28mm f2.8 Chrome *
35mm f2.8 Chrome *
58mm f1.4 Chrome *
58mm f1.8 Chrome *
85mm f1.8 Black
100mm f2.8 Chrome *
135mm f3.5 Chrome *
200mm f5.6 Chrome *
300mm f5.6 Black
500mm f5.6 Black
マクロトプコール
Macro Topcor
30mm f3.5 Chrome *
58mm f3.5 Chrome
135mm f4 Chrome
REマクロオートトプコール
RE Macro Auto Topcor
58mm f3.5 Chrome *
REズームオートトプコール
RE Zoom Auto Topcor
87-205mm f4.7 Chrome *
REGNトプコールM
REGN Topcor M
50mm f1.4 Black
REGNトプコール
REGN Topcor
50mm f1.8 Black
REトプコールN
RE Topcor N
28mm f2.8 Black
35mm f2.8 Black
55mm f1.7 Black
135mm f2.8 Black
200mm f3.3 Black
REズームトプコール
RE Zoom Topcor
35-100mm f3.5-4.3 Black

まずは標準レンズであるが、REオートトプコール58mm f1.4/1.8ともに、二つの黒レンズがある。一つは63年のREスーパーのデビューとともに少量生産されたブラックボディに標準装備されたレンズで、当然ボディと同様にかなり数が少ない。もう一つは72年にスーパーDの発売とともに標準装備されたもので、この年からは白鏡胴レンズは生産されていない。翌73年にはREGNトプコールが標準レンズになるので、このレンズも数があまり多くない。その作りはほとんど変わりがないものの、58mm f1.8の場合、初期の黒鏡胴の場合、白鏡胴レンズと同様に、先端のレンズフードを装着するバヨネットの台座の部分がメッキ仕上げになっている。しかし、後期の黒鏡胴レンズはここも黒く仕上げられている。これに対して58mm f1.4の方は、白鏡胴レンズもレンズの先端部分は鏡面メッキ仕上げではなく、鏡胴と同じシルバー仕上げである。よって初期の黒レンズも全部分が黒メッキ仕上げであり、72年の後期のレンズと一見したところ見分けが付かない。
 次に、
REオートトプコール28mm f2.8・35mm f2.8・100mm f2.8・135mm f3.5・200mm f5.6についてであるが、これらは60年代には基本的に白鏡胴しか作られていない。スーパーDの登場とともに各レンズとも順次黒鏡胴化されたが、その中で一番後に出た200mm黒鏡胴レンズはとても生産本数が少なく、今ではほとんど見かけないようだ。一説によると1000本以下であるという。ただし、35mm・100mm・135mmについては、初期にも黒鏡胴レンズが極少量作られていた模様で、「The Topcon Collection」のサイトを管理されているLeon Schoenfeld氏がこれを確認しているとのことである。28mmと200mmは比較的遅く現れたレンズであるので、Fオートトプコールとも接点がなく、初期の黒鏡胴レンズの存在する可能性は薄いようだ。
 
REマクロオートトプコール58mm f3.5REズームオートトプコール87-205mm f4.7も上記のレンズと同様に72年になって黒鏡胴化されたが、マクロトプコール30mm f3.5の場合はいつ頃から黒鏡胴になったのかはっきりとは分からない。私の所有するものはアルミ鏡胴になっている。他に知っているものは、平岡武夫氏の現代カメラ新書No.55「マクロテクニック」に記載されているレンズの画像で、これもしっかりと黒鏡胴レンズである。79年に出版された本なので、やはり平岡氏のトプコールも70年代に購入されたものなのだろう。しかしながら、元々生産本数が少ないレンズなので、その黒鏡胴となると極わずかな数しか存在しないものと思われる。
 黒鏡胴しか存在しないレンズとしては
REオートトプコール85mm f1.8が挙げられる。このレンズは生産された時期がが比較的遅く、73年になってようやく発売されたため、既に他のレンズも皆黒鏡胴化されていたので、必然的にこれも黒鏡胴で仕上げられて売られた。よってこのレンズには白鏡胴のものは当然作られていない。面白いことに、他のメーカーではポートレート用のレンズとして85mmはそれなりに多く作られたようであるが、トプコールの場合、このレンズはほとんど売れなかったようで、生産本数が極めて少ない。およそ800本程度であると思われる。もし、このレンズが60年代半ばにデビューしていたら、もっと人気があったのではないかと考えられる。何しろ73年発売となっては、既にトプコンのカメラはアメリカでもベセラー社との契約を打ち切っており、REスーパーの時代に比べるとスーパーDMの生産台数は相当低下していたはずであり、その交換レンズとなるとなおさら生産本数が少なくなってしまうのは当然のことである。ましてや、85mmは売れ線とはいえ、比較的マニアックな焦点距離のレンズであるため、その傾向がより強まるのも無理はない。
 逆に70年代にも売られていながら白鏡胴しか作られなかったものに、超広角の
REオートトプコール20mm f4がある。このレンズは69年に発売されたが、当時は基本的にどのレンズも白鏡胴であった。72年に入ってからそれぞれ黒鏡胴となっていったが、このレンズは超広角レンズであるという特殊用途色が強いため、やはり生産本数が極めて少ない。よって、新たに黒鏡胴化する前にトプコンがカメラの生産をストップしてしまい、結局最後まで白鏡胴のまま終わったと思われる。
 REオートトプコール25mm f3.5はこれらのレンズとはいささか状況が異なる。このレンズにはしっかりと黒鏡胴のレンズが作られていたのであるが、それは72年以降に作られたものではなく、60年代前半に少量生産されたものである。25mmレンズは初期の内は、形式番号の93に四桁の製造番号が与えらたが、60年代の後半からは形式番号が936になって、全体として一桁多くなった。ちなみにここまでは焦点距離標示が2.5cmとなっている。さらに70年代になると焦点距離の表示が25mmとなり、生産が終了するのであるが、どのレンズもカタログ上では全て白鏡胴のものばかりである。しかし、全六桁の番号の初期のレンズには黒鏡胴のものがわずかに見られ、アメリカ向けに輸出されていた。以前から「The Topcon Collection」のWeb-siteでLeon Schoenfeld氏が紹介されていたのは知っていたが、正直言ってアメリカ向けのカタログにすら出ていないレンズだったので、アトヌリのものであるとも思っていた。事実初めのうちは彼自身正規のものかどうかはっきりと断言できなかったようである。しかし、この度運良くこのレンズをアメリカの方から譲ってもらうことができたのであるが、実物を手に取ってみてこれが間違いなく正規のものであることを確信した。何しろ輸出用のカメラやレンズに貼られる「PASSED」のシールが貼られたまま使い込まれていたのであるから、これは決してアトヌリのものではないだろう。それに、当然のことながら、しっかりとした黒メッキ仕上げであり、この点も他の黒鏡胴レンズと何ら変わりはなかった。恐らく、国営の企業か研究所が東京光学に特別注文したものであるものと思われる。これまで色々なトプコールレンズを見てきて、初めて目にしたものであるが、73年以降になってもトプコンスーパーDMのカタログや「レンズ白書」「カメラ年鑑」等において紹介されていたのは、やはり白鏡胴の25mmレンズであって、最後まで黒鏡胴のレンズは、少なくとも国内では売られなかった。
 トプコンがREスーパーの生産とともに、レンズもクロームメッキしたのは、後々のことを考えると決して賢い選択ではなかったかもしれない。他社のカメラのように普通にクロームボディに黒鏡胴のレンズを付けていれば体裁は調うはずである。そうすればブラックボディに合わせてわざわざ鏡胴を改めて黒くする必要はなく、生産も一方向に絞れたのであるから、メーカーにとっても面倒なことは起こらなかったはずである。しかし、実際にはREスーパーのクロームボディに黒鏡胴のレンズを付けると、どうもしっくりこない。反対にブラックボディしか存在しないスーパーDMに黒鏡胴のレンズを付けるとその精悍さが増すことも事実である。トプコンにとっては面倒なことであっただろうが、この点にもこだわりを持ってREスーパーとその白鏡胴の交換レンズを生産していたことを思うと、一ユーザーとしては本当に頭が下がる思いになる。
 それはともかくとして、トプコールの黒鏡胴レンズは後期に作られたものが大半を占めており、その本数はどのレンズを取ってみても比較的少ない。それに、まだ一度も見たことがないが、ひょっとすると20mmなどにも黒鏡胴の仕様があってもおかしくはないかもしれない。そうしたことを考えてみると、東京光学製一眼レフ用交換レンズの種類や数自体は他の大手メーカーに比べて少ないものの、いつまでも探し求める楽しさは続いて行くような気がしてくる。

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