TOPCON CLUB(トプコンクラブ)〜トプコンよもやま話12
Lマウントトプコールレンズテスト
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時として本家ライツのレンズよりも高価に取り引きされるLマウントトプコール。1950年代に東京光学の技術を広く世にアピールしたレンズ達であるが、現在はなかなか入手が困難である。今回はこのLマウントレンズについて、私の手元にあるものを使ってテストし、多くのファンを持つトプコールレンズの優秀性について考えてみたいと思う。 テストしたのは12月末の午後3時で、天候は快晴であった。前回は以前135mmのテストでも使った場所で、5cmレンズには厳しい遠景の撮影であったので、描写の判別があまりはっきりしなかったため、今回は10m位から無限遠までを写すようにし、直線的なものと曲面のあるものとが同時に見られる被写体を選んでみた。 どのレンズもレオタックスFVを用い、シャッター速度は1/1000秒、絞りはf8で撮影した。フィルムはフジカラー・スーペリア400を使用し、ナニワカラーキットで自家現像した。それをニコン・クールスキャンIIIを使用して、横1380ピクセルで取り込んだものをトリミングして400ピクセルに縮小し、ねむくなった分を補う意味でシャープネスをかけておいたものが下段の左側の写真である。色の補正は一切かけていない。また、縮小していない画像の一部をトリミングしたものが右側の写真で、こちらはシャープネスをかけていない。色も取り込んだままである。 |
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シャッター速度〜1/1000秒 絞り〜f8 |
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エルマー型のレンズで、シムラーの5cm f3.5と基本的に変わらないが、レンズのコーティングの違いからか、かなりコントラストの強い、線の太い描写をするようだ。相当深い色が出るが、全体としてマゼンタの色が強い |
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シャッター速度〜1/1000秒 絞り〜f8 レンズフード使用 UVフィルター使用 |
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絞りの位置を前玉の直後から二枚目の後ろに移したテッサー型で、この手の沈胴f3.5レンズの中では随一の評価を持つ。発色はニュートラルでシャープネスもさすがであるが、この画像ではちょっと分からないかもしれない。 |
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シャッター速度〜1/1000秒 絞り〜f8 |
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前半がゾナー型、後半がガウス型の構成を持つことで有名なレンズであるが、シムラー5cm f1.5を再設計してより高性能になっている。開放からしっかりした解像力を誇るが、f8に絞り込むと文句の付けようのないまでの画質になる。色のコントラストは強い。 |
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シャッター速度〜1/1000秒 絞り〜f8 |
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空気レンズの採用されたレンズ。前期f3.5に比べ、かなり繊細な描写になるが、シャープな点はこちらの方が上。しかし、コントラストの点ではちょっと弱いようだ。雲が出始めているが、f1.5ほどしっかりと写り込んでいない。モノクロではY2フィルターが欲しいところか。 |
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シャッター速度〜1/1000秒 絞り〜f8 |
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このレンズは前のモデルより一層線の細い描写になるが、発色のバランスは優れている。コントラストも悪くない。f1.5の発色に比べてクリアーな感じがする。ここでははっきりしないが、シャープネスも文句ないレベルである。 |
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シャッター速度〜1/1000秒 絞り〜f8 |
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前のTOPCOR-S 5cm f2に良く似た描写であるが、最もカラーバランスが優れている。シャープネスも文句のないレベルで、総合的に見るとNo.1なのではないだろうか。立体的な感覚も非常に高く、これぞトプコールと言った実力のレンズである。 |
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シャッター速度〜1/1000秒 絞り〜f8 |
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すっきりした描写が心地良いものの、力強い印象はない。シャープさは前期沈胴f3.5のに比べればわずかに勝っている。カラーは若干マゼンタが強く感じられるが、決して悪い描写ではない。右上の大きな煙突の二本の線がしっかり出ているように、繊細だがシャープさを持ったレンズである。 |
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シャッター速度〜1/1000秒 絞り〜f8 |
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このレンズも立体感の強い描写を見せる。パイプの階調の豊かさはさすがであるが、マイナスポイントはTOPCOR-S 5cm f2 中期白鏡胴黒絞りリング型に比べると発色がかなりキツイ点が挙げられる。これはフィルムとの相性があるので、一概には言えないことであるが。 |
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シャッター速度〜1/1000秒 絞り〜f8 |
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非常に数の少ないレンズで、f2アルミ黒鏡胴レンズと同じレンズであると思われがちであるが、実は全く別のレンズである。描写もこちらの方がニュートラルな発色を見せる。f1.5に比べると、ちょっと見劣りがするが、TOPCOR-S 5cm f2 前期白鏡胴と比べると決して劣っていない。 |
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シャッター速度〜1/1000秒 絞り〜f8 |
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広角レンズだけに遠景はキツイものがあるが、思いの他良い写りをしてくれた。階調の豊かさは文句なしである。周辺部の描写もしっかりしていて収差の影響はあまり感じられないが、わずかにタル型の描写になっているようだ。発色は冷色系である。 |
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シャッター速度〜1/1000秒 絞り〜f8 |
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35mmに比べてカラーバランスはニュートラルである。シャドーの描写もつぶれることなくしっかりと写ってくれるので、かなりその実力は高いものと思われる。ただし、階調の豊かさは5cm f2の各種に比べると見劣りする。 |
今回はカラーネガの画像であるが、皆さんはどうお感じであろうか。どのレンズもf8くらいがベストなのだろうから、良く写るのは当然なのであるが、それでもこのようにそれぞれのレンズの個性がしっかりと表れた。この程度の大きさの画像ではシャープネスについてはしっかり差別化できていないが、私が大きな画像で確認した上でのコメントなので、その点は参考にして頂きたい。開放での描写力は「フォトギャラリー」のページを参考にして頂くことになるが、どのレンズもなかなかシャープでフレアの少ない描写をしてくれるように、50年代のレンズとしてはかなりの位置にランクされるものと思われる。 さて、今回のテストを簡単に総括すると、前期沈胴型 5cm f3.5は目の粗い描写であるが、力強い感じであるのは良いし、後期沈胴型はテッサー型の割に繊細な描写を見せる。空気レンズの採用された5cm f2もその傾向が見られる。5cm f1.5は今回のテストの中ではかなり上位にランクできる実力を持ち、万能レンズと言えるだろう。Sの5cm f2前期・中期モデルはさすがに新設計のレンズだけあってとても優秀な描写力を持っていると思われる。線が細くかつシャープな描写は、ある意味トプコールの特徴とも言えるが、このレンズは正にこうしたイメージにぴったりのレンズである。5cm f2.8はすっきりした爽やかな描写を見せるが、押しの強さやトプコール特有の立体的描写は弱い。後期の黒鏡胴の5cm f2とf1.8は見た目にそっくりなレンズでありながら、性格はかなり異なり、f2が押しの強い描写なのに対して、f1.8は質素な描写になる。35cmのすっきりとした描写は見事。正直言ってここまで写ってくれるとは思わなかったが、中心部から周辺部まで均一な画像を見せる。発色は5cm f3.5後期沈胴型に近いが、設計された時期も近いので、それも肯けるだろう。付けっぱなしにしていても良いレンズである。9cmもさすがである。私の所有するLマウントレンズの中では唯一の望遠レンズだけに、その期待も大きかったが、以前テストしたレンズは無限が出なくて修理するハメになった。今回テストしたレンズは別に入手したもので、手の入れられていないオリジナルな状態のもので、実際その写りは期待にしっかりと応えてくれるものであった。 以上の結果から、私が勝手に決めたLマウントトプコール標準レンズのランキングを述べてみると、1位はTOPCOR-S 5cm f2 中期白鏡胴黒絞りリング型になる。わずかな差で2位はトプコール5cm f1.5だが、暗くても開放できれいに撮れる万能さを考慮すると甲乙付け難い。しかし、一般の撮影に使う限り、やはり画質はS5cm中期モデルの方が一枚上だろう。3位となると厳しいが、トプコール5cm f3.5後期沈胴型かS5cm f1.8あたりか。S5cm前期白鏡胴と後期アルミ黒鏡胴は、発色については性格が両極端だが、どちらを上にするかは決めかねる。5cm f2.8と5cm f2、f3.5前期沈胴型は前述のレンズに比べるとやや劣るような気がするが、これも好みの問題なので何とも言い難い。やはり絶対値で決めるのであれば、レンズ白書のような平面チャート式でテストして、レンズの性能の一面で決定するしかないが、それだけでレンズの良さは測れないことは確かであると思う。やはりレンズは使い込んでみて初めて理解できるような気がする。 |