FOTOCAMERE ITALIANE-Notice

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フェラーニアのカメラ名表記とその意味

 
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 Ferrania Linceですが、以前より日本で「リンス」と表記され、私も英語圏からの外来語を付けた名だとばかり思って、何も疑問を持たずにそれに従っていましたが、ふと気になることがあって調べ直してみました。と言うのも、「ce」の発音は例えばFiat Cinquecento(チンクェチェント=500)のようにそもそも「チェ」ですから、「ス」とはなりませんが、英語ならそうもなる可能性がありますし、スペイン語でも「リンス」となりますから、あまり気には留めていませんでしたが、そもそも「Lince」とは何かと言うことが気になった次第です。すると、「リンス」と言う発音表記がまったくの間違いで、やはり「リンチェ」と読むことが分かりました。
 フェラーニアはカメラの名に鳥の名を付けることが多くて、ギリシャ文字名(アルファやベータ等)や数字のものも多いのですが、それら以外のものを含めて調べてみました。すると、面白い結果が出てきて、レンズの飛び出る66判スチルカメラのASTOR(アストール)は英語で言うHAWKの意味で、簡易カメラで有名なIbis(イビス)はトキでした。このように鳥のイタリア名をカメラの名に付けていたと思いきや、35mmカメラのゼフィアは英語で言うZepyer(ゼファー)、スペイン語のセフィーロ (Cefiro)と同義の西風を指します。カワサキのバイク名にゼファーがあるので馴染み深いですが、鳥の名ではありませんね。
 で、問題のLinceですが、これは英語のLinse(インス・リンゼ)とは異なりスペイン語・イタリア語等では英語のLinx(リンクス)と同義のオオヤマネコを指す言葉でした。 イタリア語読みは「リンチェ」となりますので、これまで「リンス」としてきましたが、それだとスペイン語読みになり、イタリアンカメラの名の呼び方としては間違いだった訳です。そこで、フェラーニアのギリシャ文字系のカメラ名や数字以外のカメラ名をまとめてみました。

Falco(ファルコ)〜隼(ファルコン)
Condor(コンドール)〜ハゲタカ(コンドル)
Rondine(ロンディネー)〜ツバメ(スワロー)
Colibri(コリブリ)〜ハチドリ(ハミングバード)ドイツではKolibriと言う名でコンテッサ・ネッテルのカメラに同名のものがありますね。
Tanit(タニット)〜古代カルタゴの月の女神(タニス)
Elioflex(エリオフレックス)〜ギリシャ神話の太陽神(ヘリオス)にflexを付けたもの
Astor(アストール)〜鷹(ホーク)
Ibis(イビス)〜トキ(英名もイビス)
Eura(エウラ)〜正義(ジャスティス)
Lince(リンチェ)〜オオヤマネコ(リンクス)
Zephir(ゼフィア)〜西風(ゼファー)
Electa(エレクタ)〜選ばれた者(セレクテッド)

 ざっとこんなものですが、英語でも語源が同じだと分かるものもあれば、さっぱり異なるものもあって、面白いものですね。イタリア語翻訳では出てこない単語も多く、英語サイトの名前に用いる言葉の語源を調べるページが有効でした。あとは本家のWikipedia等を利用して調べましたが、やはり鳥の名が多いですね。60年代途中からはFerrania 3Mの時代になって、カメラ名は数字の味気ないものになってしまいました。
 他に、これはフェラーニアに限ったことではないのですが、英語と同表記で車等に良く使われる「Super Sport」はイタリア語では「スペル・スポルト」となりますが、イタリアでも英語が外来語として浸透した場合が多く「スーパー」としても問題ないそうです。(2014年6月)

イタリアンカメラ名のカナ表記

 日本では、江戸時代に入ってきた西洋の言語はオランダ語が唯一でしたが、明治維新からは英語をメインにして、医療や科学分野ではドイツ語、芸術分野ではフランス語等が一気に入り込んできましたから、ジャンルによって用いられる外来語が異なる言語を用いると言う、とても不思議な事態になりました。これが戦前まで続き、現在の外来語の基盤になっていますが、戦後はしばらくアメリカ英語が幅広く浸透して行きます。ですから、ローマ字表記されたものはついつい英語風の読み方をしがちになりますが、これは世界の共通語と言ってもおかしくない英語しか、一般的には外国語の教育として施されていないので、致し方ないことでしょう。でも、様々な国で名付けられたものは、基本的にその国の言語での発音に似せて我々も仮名書きしているはずでしたよね。例えば、国名や地名が良い例ですが、イタリーとはあまり言わずにイタリアを用いたり、ジャーマンよりもドイツを多用したりするように、これは戦前からしっかり入り込んでいた言葉は、その国の発音からくるものが浸透していた証拠ですね。反対にイスパニア→スペインとなるのは共通語としての英語の強みでしょう。
 それではカメラの分野はどうなのかと言うと、これは庶民に浸透するのが戦後しばらくしてからですから、当然アメリカ英語の影響が絶大で、カメラ王国であったドイツ製もホクトレンデル→フォクトレンダーとなるように、随分本来の名前が英語っぽくなっちゃいましたね。とは言え、古い本にはドイツ語発音風の名でカナ書きされていましたように、これが国内で通じないと言うこともありません。
 でも、イタリアンカメラがわずかなファンを捉えて表に出るようになったのは、ここ数年のこと。一部レクタフレックスやドゥカーティなどの有名モデルは以前から知られていましたが、これは国産機や見慣れたドイツ製に飽き足らなくなった層が珍しいものに手を伸ばしてきたことによりますので、やはり随分後になって広まることになります。それを裏付ける事実ですが、“DUCATI”はカメラよりもバイクの世界で有名になり、日本にもカメラとは別ルートで先に入り込んできたために、その表記は昔から本来の発音に近い「ドゥカティ」が使われてきました。“DUCATI”のカメラがある程度知られるようになったのは、生産されていた50年代初頭ではなく、クラシックカメラのファン層が広まって行く80年代以降がいいところで、それがバイクとは全く別のルートで知られた結果、当初雑誌などで英語っぽい読み方で表記されてしまった「デュカティ」が今でも使われます。しかし、これは和風英語であって、実際にはアメリカ人でも、有名なバイクの存在から「ドゥカティ」と発音する人が多いそうです。
 さて、イタリアンカメラの本来の発音の仕方はどうなのか。これはやはりおかしな「和風英語風イタリア語」ではいけません。本文にも書きましたが、例えば少し前のカメラ雑誌ではガンマ・ペルラを英語のパールと混同して「パーラ」と書いていましたが、これはイタリア語では本来の真珠の玉ではなくキ○タマの意味になっちゃいます。こんなのは極端な例かもしれませんが、できるだけ本来の発音に近付けて表記することが望ましいでしょう。
 「それではイタリア語風のカナ表記はどうするの?」と問われちゃいそうですが、かく言うワテも別にイタリア語ができる訳でもなんでもありません。ただ、アルファベットを「ローマ字」と言っていたように、正にローマ字読みしていれば多くの場合、発音を外すことはないそうです。+α的にちょっと外れた決まりを知っておけばほとんど良い訳で、発音の規則性が曖昧だった英語よりもはるかにはっきりしていることが分かります。でも、やはりカメラの世界ですから、戦後のイタリアでも日本と同様に英語文化が急速に入り込んできますので、そうしたイメージでカメラにネーミングする場合も多々あります。それにLとRに代表されるように、カナで書き表せない微妙な違いがあるように、完全にイタリア語の音ではカナ書きできないのは当然ですから、なるべくそれに近付けつつ、日本語的に言いやすい書き方で表すのが最良だと思います。そこでなんとなく分かったイタリア語発音の+αの決まりを基にした、当サイトでのカメラ名表記の一部を以下に例示してみます。

あくまでも一例に過ぎませんから、これが全てではありません。また、「ァ」のように拗音として小さく書く習慣があまりないものはそのまま記しています。
I.S.O. イーゾ 母音の間に挟まれるSは濁音になります。
Sonne ソンネ 反対に母音に挟まれないものは清音になります。
Effebi エッフェビー CFGKPSTZなどの子音の重なりは普通に促音になります。
Ferrania フェラーニア LやRの重なりは促音と言うよりLやRが強まる感じなので省きます。
Koroll コロール 上に同じ。“elli”などは「ッリ」と飛ばす感じにできます。
Gamma ガンマ NやMの重なりもそれが強まるだけで、飛ばす感じではありません。
Bencini ベンチーニ CIはチに、CHIはキのようにかすんだ感じになります。
Chinaglia キナーリア CHIは上に同じ。GLやGNの場合のGはとても弱くなります。
Herman エルマン Hは前に付く子音をかすませるもので先頭にある場合発音しません。
Juve ユーヴェ Jはヤ行になります。
San Giorgio サンジョルジョ ジャ行はGIA・GIU・GIO、ただのジはGI、GHIはギになります。
英語から取られたネーミングでも、基本的にはイタリア国内ではイタリア語的な発音になりますが、こちらでは本来の名を尊重して英語風に表記します。
Closter クロスター ERで終わる英語でも、イタリアではクロステルと読まれるそうです。
Reporter レポーター これもレポルテルになるはずですが、明らかな英語ですね。
Sunshine サンシャイン スンシーネとは読まないとは思いますが…。
仮にイタリアで使われる本来の読み方から外れていても、早い段階で日本で浸透している読み方のものについては、それを尊重して表記します。
Durst ダースト 引き伸ばし機のおかげで、国内でも以前からこの名で有名でした。

MADE IN ITALY / RECTAFLEX-The Magic Reflex-

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 この2冊の本は、イタリアンカメラに興味を持ったら避けて通れない関門ですよ。左の『Made in Italy』はイタリア製カメラの集大成といった内容で、ほとんどのカメラを収めています。右の『Rectaflex-The Magic Reflex-』ではレクタフレックスの開発秘話から全ての機種やアクセサリー、更には幻のレンジファインダー機の紹介など、内容は完璧です。そればかりではなく、ガンマの全てについても詳細に見られる大変興味深い本です。

 両方とも我がトプコン仲間であり、このホームページ作成の際にもご協力して下さったマルコ・アントネットさんが執筆したものです。英語が分からなくても豊富な画像を見てうっとりして下さい!

If you have an interest in Italian cameras, you are not able to pass and avoid these 2 books. Left "Made in Italy" is the compilation of all of Italian cameras. Right "Rectaflex-The Magic Reflex-", you can read all of Rectaflex and Gamma cameras in detail. Mr. Marco Antonetto who is my Topcon colleague wrote in all of both. You should order these books!

LA PRODUZIONE DELLE FOTOCAMERE ITALIANE

BookFI.jpg  こちらは上記『Made in Italy』でも執筆していたマルコさんの相棒、マリオ・マラヴォルティ氏による、イタリアンカメラの集大成本。掲載機種に関してはこちらの方が多いんすが、画像がイマイチよろしくないことと、文章が伊語であることがマイナス。まあ、文章と言っても、各メーカーの最初にちょこっと書かれているだけで、大半がスペックなのだからあまり気にはなりませんがね。ただ、とっても気になることなんですが、同じマラヴォルティ氏が執筆しているにもかかわらず、特に年代表記などのデータが『Made in Italy』とは随分違うんですよねー。フェラーニアのマイナー機種など、どっちを信用すればいいのか分からんですわい。まあ、より遅くに出版された方が正確なのかもしれませんが、そうなると94年発行と思われるこちらの方が正確なのかもしれません。でも、残念ながらかなりいい加減なところが多いので、やっぱ正確性を求めてはいけません(笑。
 ま、こんな塩梅ではありますが、掲載されるイタリアンカメラの数は非常に多く、全300ページに至ります。全部を鵜呑みにしてしまったらマズイでしょうが、ちょっとした辞書的な使い方をする限り、とても有意義な書物ですね。購入はミラノのカメラショップに問い合わせてみるといいですよ。ほとんど英語のメールで大丈夫です。

LE FOTOCAMERE ITALIANE Series

BookBencini.jpg  このシリーズもマリオ・マラヴォルティ氏によるメーカー別の解説本で、A5サイズの単行本になります。I.C.A.F.時代のボックスカメラから70年代の8ミリカメラや80年のハーフカメラであるパーソナル・レポーターまで、プロトタイプも含めて180機種にわたって紹介されています。これって、考え方によったらスゴイことで、日本でタロンやネオカなどの大衆機メーカーが一冊の本になるなんて考えられないっすからね。そう思ってみると、これってなかなか気合入った本だと思われますよ。伊語オンリーですが…。
BookDucati.jpg  ドゥカーティは基本的にはソーニョとシンプレックスの二機種しかないんですが、その交換レンズやアクセサリーがとても充実していて、それらをくまなく解説してくれたのがこの本。画像は140点、全ページ数は170になります。当時の広告や設計図なども掲載されていて、かなり充実してますよ。また、こちらは伊語・英語併記でとっても助かります。97年出版ですし、かなり研究されてからまとめられた本なので、信憑性は高いでしょう。
BookFerrania.jpg  フェラーニアは本業のフィルム生産はともかくとして、カメラの生産はその大半が安っぽい簡易カメラばかりでしたが、そのためか非常に多くの機種を手軽に出しては引っ込め、出しては引っ込めしていました。一部のモデルはとてもしっかりしていましたが、結局はどれも社外に発注したものでした。それらの実に様々な機種をほぼ網羅しているばかりでなく、94年の3M Italiaの「写るんです」にあたる機種まで紹介されています。ただし、文章は伊語オンリー。
BookOG.jpg  オフィチーネ・ガリレオは日本で言えばニコンのような総合光学メーカーで、戦前から様々な光学機器を作っていました。この本では伊語・英語で会社の沿革からカメラ以外の光学機器まで紹介されていて、メインのカメラについてもコンドール、ガミ16、ライカスクリューマウント交換レンズ等、とても詳しく解説されています。特に有り難いのが当時のカタログのコピー。レンズ構成図などがこれで良く分かりました。
BookSubmini.jpg  表紙に写っているのはサン・ジョルジョのパルヴァという幻の試作機ですが、紹介されるカメラはタイトルの通りサブミニチュア機全般です。ベンチーニやドゥカーティやGaMiなど名が知れたものはもちろん、G.P.M.とかC.O.M.I.にサン・マルコなど、マイナーな機種もバッチリ。でもI.S.O.のステレオカメラDuplexをサブミニチュアに入れるのはどうかと思われ(笑。全体で58機種、150点の画像が楽しめますが、残念ながら伊語のし。

イタリアンレンズの描写

 ツァイスやライツ、シュナイダーやローデンシュトックなどの名門がひしめくドイツの光学メーカー。これに対し、日本光学や東京光学、キヤノン、小西六にミノルタなど、ドイツに勝るとも劣らない技術を持っていた50年代の日本の光学メーカー。さらには個性豊かな特徴を備えたフランスやイギリスのレンズなど、世界には様々な優れたレンズがそこかしこにあるものです。しかし、皆さん、イタリアンメーカーのレンズと言われると、「う〜ん、どうだっけ?」と首をひねられること間違いなしでしょうね(^^)。実際、メーカー名ですらせいぜいオフィチーネ・ガリレオくらいしか思い浮かばないでしょう。では、その他のメーカーも含めて、一体全体イタリア製のレンズってどんな感じの写りをするのかを、非常に大まかではありますが、ご紹介したいと思います。

 まずはイタリア最大の光学メーカーであるオフィチーネ・ガリレオについて。このメーカーのレンズの実力を一言で表すと、「中庸」。ま、可もなく不可もなしっつうことです。そこそこのシャープネスとコントラストを持ち、カラーバランスもなかなか。でも逆光にはてんで弱く、絞り開放でも甘さが目立ちます。フードを使って順光撮影をしている限り、問題はないでしょう。3枚玉のコンドールI型用のエリオーグ5cm F3.5もガウス型のコンドールII型用エザオーグ5cm F2も同じ傾向を示します。面白いことに、オグマー9cm F4もまた然り。メーカーの設計思想が反映されているのでしょうかね。

 二番目のメーカーはサン・ジョルジョ。ここはヤヌアを作ったメーカーで、あの特異なボディに目が向きがちですが、レンズも高性能なんですよ。実力はイタリアンメーカーの中でも1・2を争うものがあるでしょう。シャープな感覚は間違いなくガリレオをしのぐものがありますし、その線も細く、ボケも悪くありません。ただし、問題はF3.5の標準レンズしか入手できないことで、結局はテッサー型の範疇を超えるものはなさそうです。

 次はI.S.O.ですが、ここのレンズはシャープネス命といった感があります。若干ボケが2線ボケ傾向があるのは絞りの問題でしょうか。実はここのレンズもほとんど標準レンズ以外入手困難です。ビルクスの標準のイリアー5cm F3.5(レポーターの頃はイアダー)はエルマー型でして、やはり線太のはっきりした画像が見られます。色合いはニュートラルで、個人的には好みです。レポーターの標準のイリアー5cm F2.8は二線ボケ傾向もなくスッキリ。相当イケるレベルです。アリオン5cm F1.8はさすが大口径だけあってボケが柔らかくいいですが、コントラストはあまり高くありません。フードは必須ですね。我が家にはイリアー12.5cm F3.5もありますが、これはレポーターの有効基線長の短い距離計ではピント合わせが厳しいですね。ちょっと大柄なレンズでいかにも良く写りそうな玉なのですが、完全にピントが合った写真は数えるほどしかないのが悲しいところ。使い方の難しいレンズですね。

 クリスタルに付けられているステイナー(クリスタル53ではクリナー)は、どのメーカーが作ったものかは今のところはっきりとは分かりません。トリプレットの割りになかなかシャープでボケも悪くはないものの、周辺部の描写に難があって、結構顕著に流れが見られます。これがなければいいレンズなんですがねー。ちなみに、ワテの見たところ、これらのレンズは下記トリクサーも含め、クロスター製のアリエス50mm F3.5(クロスター・プリンセスに付いた玉で、レクタフレックスにも卸されました)と構成もコーティングも口径もそっくりですんで、十中八九間違いないでしょう。

 同様に、ヴェガの標準のトリクサーもステイナーと同じメーカー製のトリプレットですが、こちらは流れがほとんど見られません。若干冷色系ですが、抜けるようなすっきりとした描写を見せてくれます。お勧めの優れものですね。3枚玉では世界でもトップクラスの実力なんではないでしょうかね。ステイナーとクリナー、トリクサーの撮り比べをしたところ、やはりトリクサーが一番でクリナーが次に良かったですが、結局は同じ設計のレンズである上、組み立てすら同じところで行われたものですので、この結果は単なる個体差と言えます。なお、廉価版のヴェガ・スタンダードに時折付いているWega 5cm F3.5は単なるトリクサーのネーム違いで、鏡胴まで同じです。ヘリコイドリングだけアームを省いたものになっている点が異なるのみのようです。

 フォトテクニカのレンズは主にエルマンなどのレンズシャッター機用のものなので、初めから高級フォーカルプレーン機のものに比べて劣るような先入観がありますが、これは別段間違いではなさそうです。こちらもトリプレットではありますが、ちょっとくすんだ感じが残ります。これは多分レンズの内面反射がもたらすことで、フードを付けてもイマイチ解決してくれません。当初はコリストカ名ですが、オリンピックではスーパースペシャル名です(笑。

 ガンマのコリストカは由緒ある名門ですが、40年代末にはガリレオが事実上作っていたようです。このレンズも3枚玉でして、条件が揃うといい画像を生んでくれそうな印象ですが、それは淡い期待とでも申しましょうか、フレアーの影響で何だかぼんやりした画像が多いです。中間描写もイマイチで、ちょっと深い色合いの物体はすぐにつぶれた感じになってしまいます。シャープ感もなく、あまり良い面の見られないレンズですね。反面、ガンマ用の非イタリア製の標準は良く写るので、その差は一層強く感じます。

 大衆機の単玉レンズはどれもなかなか優れものが多いですよ。特に、一番安っぽいベンチーニのレンズはどれも「意外とやるじゃん」と思うでしょう。クロスターの単玉レンズもなかなかです。でも、周辺部の流れは何をしても消えませんが。残念ながら赤窓式のものが多いので、大半がモノクロでしか撮ったことがないですが、ホントに中心部はシャープですよ。問題は単速・絞り固定が多いため、現代の高感度フィルム(ISO100でも当時は高感度になってしまうんですね)では、快晴の日中での撮影は露出がオーバーになりがちです。

 ドゥカーティのレンズもまだ標準しか使っていませんが、これは当初期待が大きかっただけにちょっと逆光になると強いフレアーが出たのにはチトがっかりしました。でも、普通に撮る限り、像の歪みもないし、シャープ感もなかなかで、あまり問題は感じませんでした。ボケは焦点距離が短いため、あまりはっきりとは出てくれませんでしたね。カラーバランスは良好で、結構コントラストが強くて押しの強い感じでした。

 とまあ、こんな感じですが、50年前後のイタリーでは職人の手作業による生産が主でしたから、モノによって随分差が出るでしょうね。でも、ツボにはまった時は、ホントにナイスな描写をしてくれるレンズが意外と多いんですよ。全体としてスナップ向きのレンズが多いかな。
★ 日独伊のライカ型カメラのレンズ描写を、同一条件でテストした際のレポートのページをこちらにリンクさせておきます。現在休止中の作例のページに加えていたものです。

イタカメ相場って?

 イタカメは一部のモデルを除いて、なかなか国内では見かけませんよね。比較的見かけるものを挙げると、レクタフレックス・コンードルI型・ドゥカーティ・ガンマあたりでしょうか。ベンチーニの各種もちらほら見かけます。これに対してクリスタルやI.S.O.、ソンネやヤヌアなどのフォーカルプレーン機はあんまし見ないですよね〜。で、一体いかほどの値が付くものかと。ちょいと少ない情報を調べてみましたので、ご参考までに。

レクタフレックス〜これは付いているレンズにもよりますが、一般的な1000または1300のクセノン付きなら10万円程度で国内でも売られています。この時代のクセノンは曇りが結構出やすいようで、いい状態のレンズが少ないかも。ちなみにサッパシ出てこないレンジファインダーのレクタは7000ユーロオーバー。「ひぇ〜」です。

ドゥカーティ・ソーニョ〜国内では12万はしますが、ちょっと前なら海外で意外と安く、1000ドルには至りませんでした。ヨーロッパでも850ユーロといったところが多かったのですが、最近向こうでもイタリアンカメラが高騰中。かつては断然海外通販がオトクだったのですが、今の為替レートが1ユーロ150円を超えるので、結局国内の方が良さ気ですねぇ。シンプレックスは3割安といったところ。交換レンズが滅茶苦茶高いので有名ですね。

I.S.O.〜最も人気のあるレポーターは、以前30万オーバー確実でしたが、このところクラシックカメラが国内で安くなってきているので、20万円程度で入手できるかも。ヨーロッパではまだ2000ユーロ以上の値が付きます。廉価版のスタンダードでは1000ユーロ、15万程度を見ておけばいいかな。あまり出てこないBiluxは美品だと3000ユーロで、ほとんど出てこないLuxは…、おっかね〜…。

ヤヌア〜タケーっす。以前売りに出されていたものを見ますと、2400ユーロから2900ユーロでしたんで、円に換算すると確実に30万オーバー。アメリカでも3000ドル以上で出ています。ないからしゃーないんですね。

ソンネ〜これはモデルによってばらつきがありますが、IV型やV型は1000ドルクラス。国内でも15万円前後。最も高いC4は20万円オーバーですが、もちろん程度により上下します。海外では2900ユーロを付けるところもありますが、ちょっとこれは無理があるかな。

クリスタル〜最も意識されるクリスタル53は、海外で売りに出ているのを見かけませんが、イタリア本国でも2000ユーロを確実に超えるそう。ワテは国内でさらに高値で買いましたが、(ToT)と(^∀^)の混じった複雑な気分でやんした。ちなみに3sは某ショップの年末セールで15万で、これはニンマリ。一般的にはやはり20万コース。2aや2sは廉価版ゆえ、普通に15万程度でしょう。スタンダードは現在1000ドル近辺で売りに出ていますね。

ヴェガ〜IIaが1000ユーロで出ていますが、国内では15万の値が付いていました。どちらも程度があまりよろしくないモノの値段です。

ガンマ〜I型はあちらではそこそこ安くて、レンズ付きで1000〜1500ユーロくらい。かなりカメラの程度にバラつきがあるようです。II型やIII型はLマウントで互換性があるため人気があるようで、2000ユーロ前後になります。国内ではI型もIII型も20万オーバー。少ない割に出てきます。ただし、Lマウントのものはレンズが外されていたり、取り替えられていたりしていますので、要注意ですね。

コンドール〜I型は国内でもちょろちょろ見かけますが、おおむね3万円台。でも、海外ではもっと安くなりますね。180ドル程度でしょうか。eBayでも150ドルあたりで落ちますので、向こうで買った方がオトク。ただし、故障品が多いです。II型はさすがに国内では高くなります。8〜9万円台で出ていますね。中古市で4万円台で出ていて「おっ!安っ!」と思いましたが、ファインダー周りが死亡したものでした。海外ではあまり見かけませんが、1000ユーロオーバーで売りに出てはいます。でも、これは高過ぎかな。

ガミ16〜国内価格は10万コース。でも、アメリカでは550ドルから750ドルが相場のようです。コンバージョンレンズは高くて、何でもイタリア本国でも800ユーロはするそうです。少ないのでしょうね。

エルマン〜ほとんど出てきませんが、オリンピックは1000〜1400ユーロ程度が相場のようです。金ピカ仕様は2500ユーロだそうで、レンズシャッター機なのにモウレツにタケーです。珍度が高いのでしょうか。

ダースト〜最も単純なドゥーカが最も高値で、あちらでは150ユーロから250ユーロになります。アウトマティカは100ユーロに満たないようですが、現在国内では2万円以上の値が付いています。相場のないカメラは値がばらつきますね。

フェラーニア〜これはあちらではどのモデルも安いです。100ユーロを超えるとしたら、古いファルコやしっかりしたレンズシャッターの使われたアストール程度で、あとは可愛らしいロンディネーくらい。ま、その他はどれも作りが単純でたくさん生産されましたから、安いのは当然ですね。

ベンチーニ〜これもほとんどがカス値。国内でも1万円に至らないレベル。でも、形に特徴のあるコメットIII型のみ、あちらでも高くて、150ドルは超えるみたいです。国内でも2万円コースでしょうか。それに、ベンチーニにしては手が掛かっているコメット35も生産台数の少なさから、そこそこの値が付きますが、国内ではほとんど見かけません。

クロスター〜距離計付きのプリンセスは若干高く、国内で4.8万の値が付いているのを見ましたが、まあ、後期のものは3万円がいいところでしょう。その他はどれも1〜2万円台で、スポルト以降の簡易モデルはベンチーニ並です。

 おおよそこんな感じですが、しかしイタカメ相場ってホント極端です。比較的高級なモノはえらく高価です。ライカコピー機などはどれもが本家のライカIII型の値段を大幅に超えちゃってますね。それに対してベンチーニに代表される大衆機はオリンパス・ペンEE以下。一方で30万なのに対して、もう一方では数千円。5〜8万円程度の中間モデルはほとんどないんですよね。摩訶不思議です。ちなみにこれら以外の特殊なモデルは、どれもびっくりするような値段が付いていることが多い反面、ショップでなく何も知らない個人がeBayに出して、相場よりもとんでもなく安くなることがあるようです。以前、超小型ステレオカメラのE.C.O.M.がeBayに出て、ほとんど誰も入札することなくカス値で落とされていました。ワテもステレオはまだ未経験でしたので手を出しませんでしたが、今思えば大失敗。また出てきたらとんでもない値が付くんじゃないかなぁ。

【追記】 上に記した相場は05年頃のもので、それから10年ほど経過した現在では、簡易カメラは除いて、高級35mmカメラやガミ16等は軒並み値上がりしています。国産のフィルムカメラがどんどん値下がりしているのに対し、個性的で絶対数が圧倒的に少ないイタリアンカメラは10年前以上に入手困難になっているようです。ちなみにヤヌアは50万円の値が付いていました(2014年現在)。

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