ヨコハマ・マウンテン・パッセンジャーズ〜ソロツーリング4
87年7月御荷鉾・甲州・南アルプス・天竜縦断ツーリング

solotitle4.jpg

8707a.jpg

 87年7月、林道ツーリングに燃えていた私は、3連休を取って幼なじみの「八百屋のこーちゃん」とともに、ロングツーリングに出かけることにした。ただし、こーちゃんの方は2連休しか取れなかったため、2日目に合流することにした。
 私がまず向かったのは秩父であるが、ここは学生時代から良く走った所である。しかし、83年頃ダートだった道も次第に舗装されつつあった。この日のメインは御荷鉾林道であったので、ここは秩父小鹿野町から太田良林道を北上した。まだダートもかすかに残っていた。
 神流湖に出てから御荷鉾林道入口に到着して幅広の登りを進んで行くと、右の写真のような休憩所が現れた。ここで一休みしつつ下を見ると、山と山の狭い谷間に見事に集落が見られた。ここは本当に関東なのかと思えるほど、寂れた感じである。山で暮らしてみたいとは思うが、一生そこで暮らせるかといったら、ちょっと自信がない。
 相変わらず御荷鉾林道は走り易い。起伏も少なく道幅も広いのでついつい飛ばしたくなってしまう。ただし荷物が多いので、自由に体を動かせないため、MX的な走りは当然出来ない。

8707b.jpg

8707c.jpg

 この写真も御荷鉾林道でのもの。後半に休憩したところで写してみたが、思えば当時は今やクラシックカメラになる貴重な一眼レフカメラをポーチに入れて、それを肩から下げて林道ツーリングしていたのであるから、とんでもないことをしていたものである。この時は標準レンズと超広角の25mmを持って行った。さすがにコンパクトカメラよりも写りは臨場感の点で優れている。とはいえ、もう今となってはそんな暴挙はとてもできないが。
 ところで、この頃の御荷鉾林道は完全にフルダートで、正味50kmの関東屈指のロングダートであった。
 御荷鉾林道を抜けて、次に定番の大上林道(舗装)→十石峠→金山志賀坂→中津川林道とつないで走ったが、初めてここを訪れた時には大上林道もぶどう峠も未舗装であった。特に大上林道は荒れた道で、大きな石が路面の至る所に出っ張っていて、走りづらく思ったものであるが、次のシーズンにはあっさり舗装されていたのにはがっかりしたものである。しかし、十石峠や中津川林道はダートのままで、それぞれ15km・25kmは楽しめた。これらの道も今となっては舗装化が進み、御荷鉾林道でさえ2/3は舗装されてしまったようである。

8707d.jpg

8707e.jpg
8707f.jpg

 さて、中津川林道を抜けた私は、翌日こーちゃんと甲府で待ち合わせていたので、大弛峠を越えて南下しておかなければならなかった。この道はいつも甲府側から走っていたので、川上側から走ってみると何だか違った雰囲気がしたものである。しかも、そろそろ薄暗くなりつつあったので、とにかく先を急いだが、信州側の荒れた登り、甲州側の荒涼とした黄土色の土の道と、夕日に照らされたその光景が今でも強く印象に残っている。ただ、先を急いでいたので写真を写していなかったのが残念である。
 大弛峠を抜けて杣口林道を下ろうかと思ったが、ここもダートだったのは86年までで、87年には舗装されていたのを知っていたので、右側の焼山林道側を下ることにした。しかし、こちら側も舗装されており、ちょっと腰砕けであった。ただ、既に暗くなってきていたので、提灯ライトの我が愛車にとってはかえって幸いだったのかもしれない。
 途中、適当なスペースを見付けてテントを張ったが、結構走り詰めであったので、川上で買っておいた食事をとってすぐに寝てしまった。いよいよ明日はこーちゃんと待ち合わせである。
 朝、山梨学院前で落ち合った我々は、この日たっぷりと昇仙峡の林道群を満喫すべく、まずは武田神社から太良ヶ峠に向かい、水が森林道を走った。この道は当時開通したばかりの新しい道で、どの林道情報誌にも載っていなかったが、国土地理院の地図に細々とつながっているのを発見して走ってみることにしたのである。入口にもう一つ柵のある分岐があり、そちらも走ってみたがすぐに道はなくなっていた。水が森林道は入口から赤土のしっかりした道で、ちょっとぬかるみもあったが、実に走り易い20kmのロングダートであった。

8707g.jpg

8707h.jpg

 次に我々は当時既に舗装されていた荒川林道→池の平林道を登って行くが、霧がかなり出てきて、結構寒い思いをした。標高が高いと初夏とはいえ、気温はかなり陽射しに左右されるようだ。
 大野山林道に入るとダートが始まり、本谷釜瀬林道を通って信州峠の方まで抜けて、県道を南下して塩川下のバス停付近から樫山林道に入った。これだけでも結構な距離になるが、ちょっと天気が怪しくなってきて、次の小森川林道を抜ける頃になるとついに雨が降ってきた。そして観音峠林道を南下している頃には相当の勢いで降っていて、土質の林道と重なってちょっと滑り易かったが、ここは早いところキャンプ場にたどり着きたい思いから、休むことなくただただスロットルを回し続けた。ちなみに当時は観音峠・大野山林道は約20km、本谷釜瀬林道は約15km、樫山林道は5km、小森川林道は12kmのダート三昧の地帯であった。
 ところで、昇仙峡道路に出る頃になると、いつしか雨も止んでいたので、せっかくだから御岳林道と野猿谷林道もぐるっと一周しようということになった。両方とも荒川林道と池の平林道の境目にある黒平の集落から南に伸びる道である。

 一通り昇仙峡の林道を走り終えた我々は、千代田湖の脇のキャンプ場でテントを張った。その写真が二枚上のものであるが、残念ながら昇仙峡の林道群の写真は天気が悪くほとんど撮っていなかった。
 最終日、ここから国道20号を西に向かい、まずは小武川林道に入った。この道は今の様子と異なり、当時は川のど真ん中に道を作ったような感じで、とても荒々しく思えた。それまで体験した林道にない強烈なインパクトがあった(今は面影なし)。
 次に走ったのが入笠山林道と黒河内林道であるが、この二つもフルダートで素晴らしい道だった。ただ、入笠山林道の方は、時折バスが通っていたのには驚いたものである。黒河内林道は35kmのフラット林道であった。

8707i.jpg

8707j.jpg

 黒河内林道から分杭峠に出て南下した我々であるが、この峠付近の道も85年に来た時にはダートであった。しかし、この時には既に舗装されており、道は変わるものだとつくづく感じたものである。
 大鹿村に入って蛇洞沢林道に入りしらびそ峠で休憩し、ここで遠山林道の入口を見ると、柵が開いていた。まだ、朝の10時前である。ではここも走っておこうということになり、どんどん道を下って行ったが、途中、営林署の人たちの乗る四駆車と出会った。どうやらこの人達がゲートを開けておいたのだろう。林道自体は15km程のピストン林道であった。
 しらびそ峠からはさらに先に、行き止まりの林道があるはずである。ちょっとここも気になっていたので入ってみることにしたが、おかしなことにどこまで行っても道は終わらない。もう30km走っているのにまだダートのまま続いていると思いきや、何とどこかの集落に出てしまった! そう、ここは当時まだ何にも紹介されていなかった新しい道で、御池山林道というらしい。後日エコーラインとして紹介されたが、95年に再び訪れた時にはすでに半分舗装されていた。それにしても新しい完抜林道を発見するのは本当に嬉しいものである(二つ上の写真)。

8707k.jpg

8707l.jpg
8707m.jpg

 御池山林道を抜けると、いかにも切り開いている最中のT字路に出たが、何かとても白い崖の岩の色が印象に残っている。どこなのか分からないので、とりあえず左に折れ、ぐるっと一周する形でダートを走っていたが、途中の分岐も全て左に進むと、とても狭い道に入って行った。路面の中央に木の板がところどころレールのようにはめ込まれていたが、全体の見通しはきかず、ちょっと不安になってきた。右手を見ると渓谷があり、そこに吊り橋が見えたので記念写真を撮っておいた(二つ上の写真)。どうやら、川の向こう側にも道があるようだが、ここは歩行者専用の橋である。
 名無しの林道を抜けるとそこは国道152号線で、うまい具合に目的の道に出られたようだ。
 さらに南下して兵越林道に入るが、こちらは前年に来た時とは異なり舗装されてしまった。以前の印象では、林道というよりも生活道といった感が強かったが、実際、対向車もそこそこ多かった。国道152号線が途中で途絶えている以上、この兵越林道や蛇洞沢林道といったエスケープ道路は舗装されてしかるべき道なのかもしれないが、御池山林道まで舗装してしまうのはちょっと残念な話である。
 さて、いよいよ天竜スーパー林道に入った我々は、まず水窪ダムでゆっくり休むことにした。
 天竜スーパー林道は86年に初めて走ったが、それは南側からであって今回とは逆であった。とはいえ、何しろ道幅が広く起伏も少ない道なので、実に快適であるのは変わらない。当時は全区間ダートで、その支線もことごとくダートだったため、全てを走るとそれこそ100km近くのダートを満喫できた。ちょっと砂埃が舞い上がるのがつらい所であったが、こーちゃんの方は後ろを走っていたので、もっとキツかっただろう。時折前後を交替して走ったが、ほとんど途中は一本道なので、彼も道に迷うことはなかった。 8707n.jpg
 当時、90kmダートの奥志賀スーパー林道、80kmダートの剣山スーパー林道、50kmダートの御荷鉾スーパー林道と天竜スーパー林道が四大スーパー林道として名を馳せたが、今や剣山スーパー林道以外は大半が舗装されている。実はまだ四国の林道を走ったことはないが、是非とも舗装化が進む前に走っておきたいものである。それはそうと、今改めて考えると、完抜長距離林道が至る所に残っていた80年代に、多くのロングダートを体験しておいたのは大正解だったようだ。もちろん、それらは最早思い出以外の何物でもないが、これはこれで私の中では貴重な財産であることに違いはない。

見出しページに戻る