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Calypso-Phot

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発売年:1961年
メーカー:la Spirotechnique
サイズ:横130x縦97x奥行44mm(ボディのみ)・61mm(35mmつき)
重量:533g(ボディのみ)・680g(35mmつき)
シャッター:金属製2枚羽縦走りフォーカルプレーン、1/1000〜1/30秒・B?セルフタイマーなし、X接点〜1/30秒
標準レンズ:Som Berthiot Flor 1:3.5 f=35mm 最短撮影距離0.8m、最小絞りf22
マウント:Calypso-Nikonosマウント(仮称)
製造数:7000台前後と思われるが不明(4000台程度の可能性がある)
シリアルナンバー:32
分類番号: グループ3

【概説】フランスのスピロテクニーク社(la Spirotechnique,呼吸技術社とでも訳しましょうか)が独自に開発した50mまでの耐圧性能をもつ水陸両用カメラ。従来水中撮影は既存のカメラを鈍重で操作性が悪い水中ハウジングに入れて行うしかなかったが、Calypso-photはボディそのものに耐圧防水性を持たせ、35mmフィルムカメラの軽快性はそのままに、水中で使用することを前提にした全く新しい操作系をもっている。この革新的カメラはクストー社長(Jacques-Yves Cousteau)とベルギー出身の技術者ウーター氏(Jean Guy Marie Joseph de Wouters d’Oplinter:貴族出であったらしい)のコラボレーションで1956年に設計、61年に販売開始になった。

 ウーター氏は1964年から65年にかけて来日し日本光学と共同研究でニコノスシリーズの発展に尽くした。Calypso名称は多方面で触れられている通りクストーの海洋調査船カリプソ号に由来する。大元はギリシア神話、アトラスの娘でトロイから帰還途中難破したオデゥッセウスを7年間島に引きとどめたニンフ。
 
こちらは世界で最も多くの実機情報が得られるサイト。

【ボディ】機能がシンプルに絞り込まれていて、耐水深50mのカメラにしては驚異的に軽量コンパクトでダイビング中の邪魔にならない。構造の特徴はアルミ合金ダイキャストに樹脂を染み込ませた耐久性が高い素材(含浸処理材)で、触れると金属なのにプラスチックのような不思議な感触である。本個体の塗装は暗い光沢グレーだが、光沢黒・結晶ブルー・縮緬黒など様々な仕上げがある。外観に用いられたグレーの貼り革はアザラシの毛皮をイメージしたと言われている。シャッター速度は倍数系列で初期は1/30〜1/1000、その後1/1000は使われないことがわかり最高速は1/500に落とされ、ニコノスIIIまで同一形式で継承された。縦走りシャッターは先後2枚のジュラルミン板で構成されるシンプルなものである。今日のメタルフォーカルプレーンシャッターのように多数枚構成ではないのでカメラの縦が高く、巻き上げにスプロケットが用いられていないため横幅が狭い独特のスタイルとなった。スプロケットを省略するとフィルム走行につれてコマ間隔が広がるが、それを防ぐ目的で巻上軸を非常に太くし、さらにカムで巻き太り分を補正している。フィルム装填交換はまず内筒と外殻を結合しているレンズを外し、両側のストラップアイレットを梃子に使って外殻から内筒を上に引き抜く。次に内筒の圧板下にフィルムを潜らせて装填し、外殻に填め込んでレンズを装着すれば撮影体勢になる。外殻、内筒とレンズの接合部、およびフラッシュ接点カバーには当時の新技術、外圧に応じて密着し水密性を保つO-リングが使われている。フラッシュ接点はニコノスI、IIと同一でアダプターを共用できるが、海水の腐食を受けている場合が多い。巻き戻しはリバースロック解除なしでノブを引き上げれば直ちに行える。ノブは軽く操作性はよいが、グローブをしてからが望ましい。海水でふやけた素手ではノブのセレーションで皮膚が裂けてしまうだろう。フィルムカウンターは底部にあり、順算、自動復元式で誤操作を起こしにくいが、表示が小さく判読しにくい。シャッターレリーズは巻き上げレバーを前方から手前に押すことで行われ、巻き上げはそれに続いて起きあがったレバーをもう一度手前に押し戻す操作で行われる独特な操作系である。かなり大袈裟なアクションなのでぶれが心配されるが、カメラ全体を手で包み込むように操作することと、作動が滑らかな上に動きのベクトルが前後方向なので案外ぶれない。シャッター速度範囲が狭いのは、水中ではカメラを固定できる状況はまずありえないので1/30未満のスローは不要だからだ。そして潜水に集中しても誤操作がなく、グローブをはめても容易に操作できるようアクションは大きくあるべきだ。すべては潜水を知り尽くしたクストーならではの発想だろう。 密閉機構のためシャッター音が大変低くキャンデッドフォトにも向いているかも知れない。

【ファインダー】ファインダー倍率約0.6倍、視野率は不明。視野全体が35mm画角に相当するがブライトフレームは入っていない。ニコノスにはパララックス補正マーク入りアルバダ式ブライトフレームが鮮明に入っている。しかしニコノスIIIまでの機種はアイポイントが短いので水中眼鏡を付けて光学ファインダーを覗いても全視野を確認しづらい。水中ではおそらく別売された外付けフレームファインダーが活用されたに違いない。

【レンズとマウント】2爪バヨネットでロックはないが、レンズも耐圧パーツの一つなので水中では交換できないし水圧で外せない。交換はボディからわずかに前に持ち上げて左右いずれかに90度回転させ、絞り・距離ノブをカメラに対して垂直位置にすると外れる。標準Florのシリアルナンバーは後端に刻印されている。装着時は時計回りにしか回らない。レンズの上下は好みの方向に装着でき、前から見て上下逆に付けておけば、頚から下げて正面を向けると絞り・距離情報が正向きに読めるのでお勧めである。絞りノブ回転に伴い距離表示のカニ鋏が動き一目で被写界深度が読めるようになっている。多くのサイトや文献には交換レンズとしてAngenieux 45mm f2.8(X1?)、Som Berthiot 28mm(Angulor f3.3?)が記載されているが、画像はお目に掛かったことがなく謎である。マウントはニコノスシリーズに継承され最新のニコノス交換レンズも共用可能で、逆にFlorをニコノス全機種に装着することも可能だ。ただし、Florにはレンズ先端のアクセサリースクリューがなく、フィルターやニコノス用クローズアップレンズの装着は不可能である。それにFlorとニコノスボディには相性があるのか、レンズがボディから浮き気味になってピントを外すことがあったが、ニコノスとニッコールの組み合わせではこのようなことは観察されなかった。いずれにせよ水中では水圧でレンズがボディに圧着されるので問題はない。特殊例として、風呂に持ち込んだ場合水圧は低い反面、高温でカメラ内の空気が膨張してレンズを押し上げ思わぬ焦点外れが生じる可能性がある。盗撮用途は考慮されていないのだ。

作例

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Calypso-phot Flor 35mm f3.5
絞り〜f8 シャッタースピード〜1/125秒
Fuji superia 400

 開放からしっかりした像を結び、絞り込むとシャープネスを増すが柔らかさは残っている。
 
 

Calypso-phot Flor 35mm f3.5
絞り〜f16 シャッタースピード〜1/250秒
Fuji superia 400

 逆光ではややフレアっぽいことに加え、太陽を画角外に置いても不整形のゴーストが現れる。レンズではなく前面の保護ガラスの問題だろうと考えている。男性のお買い物袋から湯気が上がっているわけでも、霊でもない(と思う)。

【作例・レンズのコメント】
 流石に程度がよいCalypso-Photとはいえ、O-リングの品質はもはや防水を保証できるものではなく、水中撮影を行う勇気はありません。ニコノス同様Calypso-Photはもちろん陸上でも使用可能です、Florはテッサー型につけられる名称で、35mmの広角をカバーするのはやや無理が掛かる構成かと思いますが、開放から画像の崩れが少ない懸念を払拭する性能を見せてくれます。コントラストは低めで、強い光源があると反対側に三日月型のゴーストが出るのは、レンズ前面の保護ガラスの影響を疑います。またボディ暗箱上部に明らかな光沢面を有するナットが出ていて素人目にも好ましいとは思えません。このナットは初代ニコノスでも無塗装で同じ位置にあり、ニコノスIIIでようやく無反射塗装が施された埋め込みアレンボルトになります。天空光は下側に結像するので通常問題にならないかもしれませんが、暗箱内がクリーンなニコノスVにFlorを装着すると強い光源からのフレアが随分軽減しますから、やはりCalypsoは内面反射問題を抱えています。水中では焦点距離が1.33倍に伸びるので、35mmの水中画角は45mm相当になります。しかも水中視界は最高条件でも50m、ほとんどの被写体は10m以内で目測には熟練が要求されます。他方、浮遊物のため近寄る方がクリアな水中世界では可能な限り広角が望ましい。しかし陸上用レンズの前面に平面ガラスを追加した水中レンズでは周辺の色収差と歪曲により画質低下が避けられず、広画角化は困難でした。その中でニコンの水中専用UW Nikkor 28mm f3.5は両側凹面の保護ガラスを含めた設計がなされ、陸上では焦点を結ばない代わりに水中では隅々まで高画質です。Som Berthiot 28mmもそうであったのか、実在するなら是非確かめてみたいところです。現代の目で見ればフィルム交換にいちいちレンズを外してから内筒と外殻を分離しなければならず、煩雑感はありますが、当時それほどフィルム交換を頻繁に行うことはなかったのでしょう。どうせ水中ではフィルム交換できないのです。ニコノス同様、フィルム交換時には内部機構を濡らさないようボディ表面の水分を拭き取るのは常識ですが、髪の水が滴るのが盲点です。ご注意を。

by れんずまにあ

Nikonos

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発売年:1963年8月
メーカー:日本光学(ビューティーカメラ・精研光機)
サイズ:横130x縦97x奥行44mm(ボディのみ)・68mm(35mmつき)
重量:530g(ボディのみ)・680g(35mmつき)
シャッター:金属製縦走りフォーカルプレーン、1/500〜1/30秒・B、シンクロ速度〜1/30秒
標準レンズ:W Nikkor 1:2.5 f=35mm 最短撮影距離〜0.8m、最小絞りf22
マウント:Calypso-Nikonosマウント(仮称)
製造数:不明
シリアルナンバー:927158
分類番号: グループ3

【概説】スピロテクニーク社の技術移転によって日本でノックダウン生産されたCalypso-photといえる水陸両用カメラ。このカメラは日本光学が関与しているがニコンではない。コンパクトカメラにまでニコンの名称を付与する近年とは異な、当時は日本光学本社製以外の製品はニコンではなかった。ニコノスも生い立ちはいわば傍流から出発している。スピロテクニークの親会社はフランスの工業ガス企業Air Liquide社である。その繋がりからか、帝国酸素株式会社(現テイサン)を仲介に日本光学に生産移行について打診があり、Calypso-phot発売の翌年1962年にスピロテクニークと日本光学は技術提携契約と欧州以外での販売契約を結んだ(欧州ではCalypso-Nikkor銘で販売された)。生産には1960年12月から日本光学と提携関係にあったビューティーカメラが開発段階から関与し、水圧テストでダイキャストの鬆からの浸水や防錆対策に苦労したと当時の技術者が語っている。1967年ビューティーカメラが倒産した後は、ニコンやオリンパスなどの外注生産継続のために設立された精研光機が引き継いだ。

 標準レンズとして採用されたW-Nikkor 35mm f2.5はニコンSシリーズで定評があった優秀レンズを改良し前面に平面プロテクターガラスを設置したレンズだが、ニコノス用はビューティーカメラの流れを組む冨士レンズ製の可能性がある。 ビューティーカメラおよび精研光機はニコノスI、IIの他にニコレックスII、ニコマートなどの生産およびオリンパス35、ペンシリーズの主要生産工場として1980年代まで活躍した。ニコノスは予定生産台数29,000台を満了、売れ行きは当初好調だったもののやがて落ち、不良在庫が問題視されるほどであったという。しかし数年後レジャーダイビングの普及と共に再び売れ始め、再生産には後継機II型を1968年登場させシリーズ発展を続けていく。非常に特殊だが何物にも代え難い機種を、一時の不振で安易に生産中止にしなかった日本光学の姿勢に敬意を表したいと思う。

【ボディ】Calypso-photと同じく耐水深50mのカメラにしては驚異的に軽量コンパクト.美しい光沢黒色塗装仕上げは今日でも輝きを失わない。外皮は滑りにくく、少し手に刺さるような感触のダイヤモンドチェッカーラバー。シャッター速度はCalypso-phot後期型と同じく1/30〜1/500倍数系列。縦走りシャッターは先後2枚のジュラルミン板で構成され、太陽によるシャッター幕焼き付きの心配はない。ニコノスIIまでは巻き上げにスプロケットが用いられていないためボディが細身だが、III型からはこれを装備したためコマ間隔が安定化した反面幅広になった。フィルム装填交換はまず内筒と外殻を結合しているレンズを外し、両側のストラップアイレットを梃子に使って外殻から内筒を上に引き抜く。次に内筒の圧板下にフィルムを潜らせて装填し、外殻に填め込んでレンズを装着すれば撮影体勢になる。外殻・内筒とレンズの接合部、およびフラッシュ接点カバーには当時の新技術、外圧に応じて密着し水密性を保つO-リングが使われている。フラッシュ接点はCalypso-photからニコノスIIまで同一で陸上フラッシュ用アダプターを共用できる。Calypso-photの接点カバーはコイン溝が切ってあるただのアルミ蓋だが、ニコノスの接点カバーには三脚スクリューがあるのは気が利いている。巻き戻しはリバースロック解除なしでノブを引き上げれば直ちに行える。

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 フィルムカウンターは底部にあり、順算・自動復元式。Calypso-photではカウンター指針が固定され数字が回転するが、ニコノスではカウンター周囲にドットが回転し、視認性は改善されている(写真:ニコノス-下とCalypso-photの内筒底部。カウンター形状とピンの数が異なる)。シャッターレリーズは巻き上げレバーを前方から手前に押すことで行われ、巻き上げはそれに続いて前に起きあがったレバーをもう一度手前に押し戻す操作で行われる独特な操作系で、ニコノスIIIまで継承された。ボディ上部に機械的にレバーをロックする簡単な安全装置が設けられ運搬中の不用意な誤作動を避けられる。

【ファインダー】ファインダー倍率0.63倍、視野率不明。35mm画角、近距離補正マークつきアルバダ式ブライトフレーム入り。ファインダーブロックは独立した気密構造で、ニコン防水双眼鏡と同様に窒素ガスが封入され結露を防止している。アイポイントが短いので水中でゴーグルをした状態では全視野を視認できない。従って内蔵ファインダーは陸上用であって、水中では別売のフレームファインダーを使うことになる。ハイアイポイントのファインダーが内蔵され水中でも単独で撮影可能になるのはIV-Aまで待たねばならない。

【レンズとマウント】2爪バヨネットでロックはないが、レンズは防水パーツなので水中では交換できないし。水圧でレンズがボディに圧着されレンズを外せない。交換はボディからわずかに前に持ち上げて左右いずれかに90度回転させ、絞り・距離ノブをカメラに対して垂直位置にすると外れる。絞りノブ回転に伴い距離表示のカニ鋏が動き一目で被写界深度が読めるようになっている。逆に高山など気圧が低下したり、熱せられてボディ内圧が高まった時にはレンズがボディから浮き気味になってピントを外すため、そのような場合にはレンズを一旦外して付け直すと確実である。標準レンズW-Nikkor 35mm f2.5、当初から水中専用広角UW-Nikkor 28mm f3.5が用意され、後にNikkor 80mm f4、UW-Nikkor 15mm f2.8が発売。初期モデルではモノコート、白鏡胴で後に黒塗装になり、III時代にマルチコートが導入された。IV-A時代にはTTL受光素子を遮らないレトロフォーカスタイプのUW-Nikkor 15mm f2.8と交代した。さらに最終機V時代には15mmはf2.8Nに改良、UW-Nikkor 20mm f2.8が加わった他、陸上専用防水レンズLW-Nikkor 28mm f2.8が短期間生産された。
【参考】ニコノスファミリーに関するお勧めサイト。
SEVENTH HEAVEN
海人

作例

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Nikonos
W-Nikkor 35mm f2.5
絞り〜f11
シャッタースピード〜1/500
フジカラー400G

 W-Nikkorは名レンズと言われるNikonS型用が基本なのでFlorと比べて圧倒的に安心感がある描写。フィルターφ58mmのスクリューが切ってあり,クローズアップレンズが使用できます。ニコノスはCalypso-photと比べると量産されていますから、O-リングなどメンテナンスパーツも比較的入手しやすいのですが、それでもI型用は貴重品です。従って水中撮影を積極的に行うのは控え、水中はIII型以降に任せています。ニコノスは当初全天候カメラとして宣伝されました通り、陸上でも使用可能で、耐圧構造からシャッター音が非常に小さいのでスナップにも向いています。水中では水の屈折率1.33倍だけ焦点距離が伸びるため、標準35mmの水中画角は45mm相当になり、やや使いにくくダイビング専門誌では28mmで標準、初心者には20mmが勧められているほどです。

 35mmはクローズアップレンズと組み合わせると高倍率になるので接写用のような扱いです。80mm f4は水中では画角が105mm相当になるため目測では合焦困難で、高倍率の接写専用でしょう。陸上では同様のクローズアップ、あるいは遠景か中距離の絞り込める状況に適合します。15mmは初期対称型のコンパクトさが特筆されます。

by れんずまにあ
 

Nikonos III

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発売年:1975年
メーカー:日本光学
サイズ:横145x縦99x奥行47.5mm(ボディのみ・61mm(35mmつき)
重量:620g(ボディのみ)・770g(35mmつき)
シャッター:金属製縦走りフォーカルプレーン、1/500〜1/30秒・B、シンクロ速度〜1/30秒
標準レンズ:W-Nikkor 1:2.5 f=35mm 最短撮影距離0.8m、最小絞りf22
マウント:Calypso-Nikonosマウント(仮称)
製造数:78,000台
シリアルナンバー:3149249
分類番号: グループ3

【概説】スピロテクニーク Calypso-photの基本形を継承した最後のモデル。ニコンF2と同世代であり、機械式カメラの最後の発展がみられた年代であった。次世代にはF3で、ニコノスIV-Aなど電子化の潮流が押し寄せてくる。
【参考】『ニコンF2』、FM、FE、ニコノスIIIの使い方』(日本カメラ)

【ボディ】フィルム走行安定化のためスプロケットを追加したため、ニコノスIIまでのCalypso-photオリジナルボディよりも横幅が増したことが外観上最大の変化である。そのため幅が1.5cm大型化したが、却って保持が容易になった。黒色外装は艶消しブラッククロームとなり塗装よりも強靱である。貼革はダイヤモンドチェッカーラバーだがやや頂部が丸められて手触りが優しい.暗箱上部の六角ボルトが艶消し塗装・埋め込み式になり内面反射が改善された。シャッター速度はCalypso-phot後期型と同じ1/30〜1/500倍数系列。シャッターは旧型同様先後2枚の縦走りジュラルミン板である。フィルム交換は旧型と同様に、レンズを外して内筒を外殻から梃子で引き抜く操作が必要である。フラッシュ接点は変更されIIIからVまで共通(ただしVはTTL自動調光接点が追加された)、M級バルブとX接点を持つ陸上用コネクターが用意されている。三脚穴が外殻底部中央に設置された。巻き戻しはシャッターダイヤルR位置で、クランクで行う。フィルムカウンターはそれまでの底部から軍艦部に移り、数字のみが見える視認性がよいものに改良された。巻き上げレバーはシャッターレリーズを兼ねる。ボディ横幅が増えたためシャッターレバーロック安全装置はレバーに内蔵され小型化された。

【ファインダー】ファインダー倍率約0.6倍、視野率84%(35mm)。35mmと新たに80mmに対応する近距離補正マークつき採光式ブライトフレームが併設された。オリジナルモデルよりも全視野が広く格段に見やすくなったが、依然としてアイポイントが短いので水中では別売のフレームファインダーを使う方がよい。

【レンズとマウント】Calypso-photから共通の2爪バヨネットマウント。標準レンズはW-Nikkor 35mmf2.5で、日本光学はこの時期に全レンズにマルチコートの導入を進めていた。

作例

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【作例・レンズのコメント】
Nikonos III W-Nikkor 35mm f2.5
絞り〜f16 シャッタースピード〜1/250秒 フジカラー400G

 レンズにマルチコートが導入され,従来のモノコートと比べてより現代的な写りと言えます。ニコノスIIIは私にとってはまだ実用機で、O-リングなどメンテナンスパーツはまだ新品で入手可能です。数年前までダイビングのお供で、勿論陸上撮影にも活用しました。ただし今は陸上ではVを持ち出すことが多くなりました。Vは フィルム装填が裏蓋式で陸上では特に便利(水中使用ではどうせ浮上しないとフィルム交換できないので圧倒的メリットとはいえない)、またVは公式には1/30秒止まりながらAEでは1/4秒程度までスローが切れるのが利点ですが、IIIのコンパクトさは水中では得難いので、AEが邪魔になる時やコンパクトな初期対称型15mmを装備しての目測フレーミングにはまだ現役です。またIIIは80mmを外部ファインダーなしで使える唯一の機種です.

by れんずまにあ

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