FOTOCAMERE ITALIANE - S.I.R.I.O.

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S.I.R.I.O. Elettra II

S.I.R.I.O.

シリオ・エレットラII スクルプトール4cm F5.6
S.I.R.I.O. Elettora II Sculptor 4cm F5.6

エレットラの前面

 気軽に「シリオ」と読んでいますが、実はこのメーカーの正式名称は「Societa Industriale Ricerche Innovazioni Ottiche」と言うやたらに長い名で、それぞれの単語の頭文字を取ってつないだものになります。イタカメメーカーにはこうした省略タイプの名が多いですが、大雑把に翻訳すると「革新的光学研究産業社」みたいな、大そう勇ましい名前のメーカーなんですよ(^∇^)v
 このシリオは終戦直後の1940年代半ばにフィレンツェに現れたメーカーで、カメラはこのエレットラしか作っていませんでした。まずは45年にブラックボディでSemitelar 5cm F8レンズを備えた「Elettora」がデビューし、すぐに銀梨地ボディでファインダー部を軍艦部と一体にした「Elettora I」が同年に発売されましたが、単玉レンズでエバーセットのギロチンシャッターと言う、簡易カメラに毛の生えた程度のスペックでした。見た目は完全にライカIc風なのですが、クレインと同じいわゆる「なんちゃってライカ」型カメラになります。

一応巻き上げ機構はしっかりしてます

ファインダー横の軍艦部の出っ張りはただのデザイン

 当初、シャッター機構の埋め込まれているレンズの基部と同じ径の筒がレンズ先端まで延びていて、その径はかなり太いのですが、レンズは豆粒みたいなF8レンズで、妙にアンバランスでした。46年にここを多少なりとも改善して、F5.6の3枚玉レンズが装着されたのがこのエレットラII型になります。ただし、軍艦部上にはアクセサリーシューはなく、当然シンクロ接点も設けられていません。
 元々エレットラはクロスターIIAで使われた、クロスター社製のミザール5cm F4.5を装着して販売する予定だったらしく、平たい軍艦部の初期型にミザールが付いて、鏡胴がII型のように細くなったものが広告に出ていましたが、残念ながらそれは試作で終わっていました。そのレンズは結局50年にクロスターが自社でIIAを出すまで日の目を見なかったことになります。一応、エレットラには自社ブランドのレンズが使われているので、ひょっとしたら加工は自社で行なっていた可能性がありますが、単純にコリストカ等の国内のレンズメーカーに発注していた可能性も高いです(←結局どっちなんじゃい!)。
 エレットラIIのスペックですが、35mmフィルムを用いる24x36判で、ベンチーニ等の簡易カメラとは異なり、しっかりとしたパーフォレーション用のスプロケットを備えていて、コマ送りの量とシャッターボタンのロックと解除をこれが担っています。ですから、シャッターそのものはエバーセット式でも、巻上げが完了しないとロックされたままで、いつでも切れる訳ではないです。そのシャッターはB,1/25〜1/200秒までの4段階で、絞りはf5.6〜f22までの5段階です。その絞りは6枚羽根のものが3枚玉の2枚目と3枚目の間に入っていて、シャッターはレンズの後ろになります。
 レンズそのものにはコーティングは施されておらず、最短の1mから∞までヘリコイドの回転量はたったの45度ですが、繰り出し量もさほど多くはないです。もちろん目測式なんですが、ヘリコイドを回すと先端の絞りリングも合わせて回ってしまうのはちょっと頂けないですね。ただし、せいぜい45度までしか回らないので、絞りの数字が下に隠れてしまうことはないですが、それを考えてヘリコイドの回転量を少なくしたのかどうかは不明(←まず考えてなかったと思われ)。
 ファインダーは普通の逆ガリレオ式で、倍率は0.6倍程度に見えます。何も余計なものが付いていないので、かなりスッキリして見えます。そのファインダーの横に、軍艦部に膨らみがありますが、カバーを外してみたところその下には何もなく、ただの「なんちゃってライカ」な装飾でした(笑。その前にシャッターボタンがありますが、随分中央に近いところにあるため、かなり指を伸ばして押すことになります。ストロークは長目で、シャッターも切れたのかどうか分からないようなかすかな音しかしないので、ちょっと撮っていて不安になるかも。ただし、シャッターボタン自体は巻き上げロックを解除するレバーも押すので、その際の手応えと音はそれなりのものがあります。巻き上げノブのすぐ内側にあるボタンはスプロケットをフリーにするもので、巻き戻しの際にここを押しながら反対側のノブを回すことになります。フィルムカウンターはライカと同じく巻き上げノブの基部に付いた皿のリングを回してセットします。
 フィルムの装填も含めて、形こそライカのように作られたカメラですが、機構的には簡易カメラよりちょっとマシになった程度のレベルで、パーツの数も大変少ないです。それでも横幅はフォーカルプレーン機と変わらず、重量も結構ズシリとしたものがあって、何か質感は立派なものがあります。高さが短いので、かなり横長に見えますが、これを切り詰めればクレインKIIの出来上がりになっちゃいそうです。
 エレットラは1万リラで発売されていましたから、年代的にそのまま比較はできませんが、同じような3枚玉を持つ35mmカメラとして、クロスターIIAの1.8万リラ(50年)、ベンチーニ・コメット35の10800リラ(55年)に比べても格安でしたが、やはり売れ行きは芳しくなくて、最終的に50年頃にはII型をもってカメラの生産を終了してしまいました。スペース的にゆとりがあったのだから、距離計連動式の中級機に発展しても何らおかしくない素材だっただけに、もうちょっと頑張ってくれていたらなぁ…と思いますね。

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