Fotocamere Italiane-Kristall

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クリスタル 3S ステイナー50mm f3.5
KRISTALL 3S STEINAR 50mm f3.5

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 イタリアのGN.M(Guid Nonini-Milano)から発売されたキナーリア・ドメニコ(Chinaglia Domenico)製のライカIIIaのコピー機。販売年は定かではないんですが、距離計を持たないスタンダードと距離計付きの2型が50年に登場し、その後シンクロ接点を持つ2aと、中間速度の使えるようになった2s、スローシャッターを備えた3sを経て、53年にその名もズバリ、クリスタル53が発売されました。よって、この3sは52年頃のものでしょうね。
 3sのデザイン上の特徴、はレンジファインダーユニットを完全に分けて組み立てられた点ですね。よってベースになる軍艦部とファインダー回りには切れ目があります。軍艦部を低くするため、こんな大胆なことをしちゃうとは、さすがはイタリアーノ。
 ちなみにクリスタルのスタンダードはWega IIaと同じ八角形ボディで、逆にWegaスタンダードは丸みを帯びたクリスタル3sと同じ。なんだかややこしいですが、そういうことです(下のスタンダードの画像参照)。
 クリスタル2sには1/20秒以下のスローシャッターがないですが、この3sにはシャッターボタンの前にしっかりと備えられてます。このスローダイアルは回転しないので、この位置にあるのはなかなかナイスです。また、高速シャッターの場合は回転するものの、ダイアルの形が工夫されていて、指との干渉は非常に少ないのもグッジョブです。更に中間速度が使えるのもこのカメラの優れた一面です。
 で、そのシャッターですが、音は静かであるものの、ボタンのトルクは若干重くコリッとした感じです。
 レンズ鏡胴の先端に
-KRISTALL-と刻まれていますが、黒い部分にはSTEINAR 50mm F=1:3.5のネームが彫られています。沈胴式なのでエルマー型かと思いきや、絞りは二枚目の後ろにあって、どうやら三枚玉っぽいです。製造元ははっきりしませんがイタリア製レンズであることは間違いないっす。写りは意外にしっかりしたもので、シャープとは言えないものの、絞り込んで使う限り、なかなかやるじゃんという描写を見せてくれます(←どんな描写じゃ〜)。色コントラストもなかなかしっかりしています。コーティングは深いシアン系の単色です。標準レンズはこの他にフランス製のSom Berthiot 50mm f2.8やドイツ製のSchneider Xenon 50mm f2などもありました。

 こちらはクリスタル53と共通化された軍艦部を持つ3s後期型で、53と併売されてました。機構は全く変わりませんです。
 どちらも底蓋を開けると、結晶塗装が施されていたり、全体のメッキの質も細かく上質であったり、思いのほかしっかりした作りの、真面目なカメラです。しかし、シャッターボタンはただはめ込まれただけの作りで、マウントにも焦点面を均一にするための薄いワッシャーなど皆無であるように、やはり本家のライカや日本製ライカコピー機には精度の点で劣りますね。ま、これはしゃーないでしょう。

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 そうそう、よく見て頂くと分かるのですが、軍艦部上面のネームに、この3s後期型も「53」の文字が入ってます。またレンズはこの場合オフィチーネ・ガリレオのエリオーグ5cm f3.5が付いてますけど、このレンズ、光学系はコンドールI型のものと同じでっせ。鏡胴がカッチョええっす。

This camera is the copy of Leica IIIa that was launched from GN. M (Guid Nonini-Milano) of Italy. The Chinaglia Domenico had produced this. The sales year isn't certain. However, the "Standerd" model (without range finder) and "type 2" (with range finder) appeard on the stage in 1950. Type "2a" (with the synchronize point of contact), type "2s" (intermediate speed), type "3s" (with slow shutter) are produced in 1950-52 and the "Kristall 53" was launched in 1953. Therefore, this "3s" may be a camera of around '52.
The design of "3s" is interesting. The range finder unit is divided with the body. Even the design of the body is strange, it isn't an ellipse and the corner of the octagon is curving.
The "2s" doesn't have the slow shutters of under 1/20 sec, but this "3s" equipped with slow shutters dial in the front of the shutter button. The standard lens is the "Steinar" 5cm F3.5. It is the triplet type lens, but the depiction is very sharp. Should not despise the lens made in Italy.

クリスタル 2a ステイナー50mm f3.5
KRISTALL 2a STEINAR 50mm f3.5

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 2型でスタートしたクリスタルですが、一年経った51年にはこの2aを発売します。2型にはスローシャッターがありませんでしたが、この2aも同じです。でも、シンクロ接点が新たに備え付けられました。上の3sとはシャッターダイアルに違いが見られますでしょ? このモデルまではシャッターダイアルに中間速度のマークが見られません。2sから中間速度が、3sではスローだけでなく中間速度も付けて、より高級化したんでしょう。
 ある本などには「2aには1/1000秒とスローシャッターがない」と書かれていますが、この2aにも、別に見た2sにも1/1000秒が付いていましたよ。一体どういう訳なんじゃろと悩みますが、ま、そこいらがイタリアーノの面目躍如。結局は色んなものがある訳なんですな。いや、ただの誤記っぽいぞー(^^)
 ところで、もう一つ重大な違いがありますのに皆さん気付きました? よーく見て下さい。シンクロ接点の上にマークが彫られているでしょ。これは2型にもあったものですが、この後2aの後期モデルからは消されてしまいます。でもってちょっとすると2s/3sが発売されるようになって、シャッターダイアルも中間速度表示のある、独特の荒野の用心棒のクリント・イーストウッドがかぶっていた帽子風デザインのダイアルになっていくのですー!(←ちっちゃい変更に、なに力入れてんじゃい)

クリスタル スタンダード ステイナー50mm f3.5
KRISTALL STANDARD STEINAR 50mm f3.5

 こちらは距離計のないスタンダードモデル。中間速付きシャッターダイアルから見て、2s/3sと同じ時期に作られたものでしょう。51年末か52年に入ってからかな。ちと微妙です。このカメラは、既に触れましたが、ヴェガスタンダードとのそっくりさんで、なぜかこっちにヴェガIIaと共通の八角ボディを使ってます。アクセサリーシューを黒くして、ヴェガスタンダードに丸ボディを使ったのと併せて違いを付けたのでしょうが、ささやかな工夫です。

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 おっと重大なことを忘れとりましたが、このカメラはヴェガが母体となってますんで、ボディのメッキもクロームですが、クリスタル2〜3s型はニッケルメッキで、うっすらと黄色味がかってます。

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クリスタル 53 ソム・ベルチオ50mm f2.8 シュナイダー・クセノン50mm f2
KRISTALL 53 Som Berthiot 50mm f2.8 Schneider Xenon 50mm f2

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 1953年にキナーリアの工場で生産が開始されたカメラで、クリスタルシリーズの最高峰にあたります。微妙に角度が付いたものの、丸みを帯びたボディは従来のものと変わりません。
 イタリアのライカコピー機は独創的なものが多いっすが、キナーリア製のカメラは全体として比較的平凡でした。しかし、このクリスタル53はファインダー視野率の切り替えシステムが備わり、デザイン面もイタリアン気質にあふれていますね。
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 そのファインダーですが、正面から見て明らかに大きなビューファインダーが見えるでしょ。この右側に付くレバーが視野の切り替え用のものです。28mm〜105mmまでカバーするものの、絞りのような枠を広げたり狭めたりするタイプで、倍率そのものに変化はないんです。そのため、105mmに設定した場合、ファインダーに映る画像はかなり小さなものになるのはご愛嬌。このファインダー切り替えシステムにより、軍艦部が台形の高いものになりました。
 ボディの作り自体にクリスタル3sとの違いは見られず、実際3s型もこの頃になると53型同じ軍艦部を用いたものに変更されて併売され、最終的に両者は60年代初頭まで売られたそうです。軍艦部の変更とともに、シャッターダイアルの形状も変更され、それまでの指と干渉しにくかったデザインが、キノコのようにちょっと持ち上がった大きなものになりました。

 後期型になるとシャッターダイアルとアクセサリーシューの周辺部が黒いパーツが使われてます。これはシンクロのタイミング変更用のリングで、ちょいと下に押して回すんですが、どうして急にこんなもんを付けたのかしら〜。各社でこれをなくして行こうという時に、一体ナゼだ、ナゼなんだー!
 この背面の画像でもお分かりでしょうが、このモデルは切り替え式ファインダーのため、ビューファインダーと距離計窓の位置が横一線に揃っていませんでしょ。こりゃー明らかに妙ちくりんな印象を増幅させていますね。ガンマの異常に右寄りのファインダー部もそうですが、機構のためならデザインのズレは気にしないのがイタリアーノ。でも、それがかえってたまらない魅力になっちゃって、結果としてこれがイタリアのデザインの真骨頂のように錯覚しちゃう気がしますね。メーカー側でわざとこんな風にしたかった訳でもないのにね。

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 そうそう、忘れちゃいけないことですが、このカメラから距離計の基線長が5ミリ延びて、有効基線長は67.5ミリにもなります。ですんで、長焦点レンズも余裕ですな。でも接眼部がちびっちゃいのはイカんですなぁ。
 このカメラの生産台数ははっきりとしませんが、売られていた年数の割りにはあまり多くはないようで、現在ではなかなか市場に現れないのが苦しいところ。当時の日本国内の雑誌を見ても、イタリアのカメラはほとんど紹介されておらず、せいぜいガミ16とレクタフレックス程度ですね。クリスタルなど採り上げられるわきゃーない。当然のことながら当時国内に入ってきたものはほとんどないでしょう。最近ではイタ公もちらほら見かけるようになりましたが、それでもまだまだ極少数でして、探したからといってなかなか見付かるものではないっす。特にこのクリスタル53は単純にイタ公マニアのみならず、ライカマニアからも意識されるので、本国のイタリアでも出てきた場合、結構高価で取り引きされるようです。やはり、特徴のあるカメラは多くの人々から意識されるんですね。
 レンズはやはりステイナー50mm f3.5が標準で、3sと同様にいくらかのバリエーションが用意されていました。これ以外で今分かっているのは、ある年度のカタログに出ていたKrinar 50mm f3.5、Som Berthiot 50mm f2.8、Schneidar Xenon 50mm f2の3本で、「お安いですよ〜」から「お客さん、お目が高〜い」まで、3段階用意してました。しかし、一体どんな交換レンズが用意されていたのかは不明でござい。カタログに出てないんで、ひょっとしたら純正では用意していなかったのでは…。ちなみにボディのみの価格は53が57.000リラで、3S後期型が46.000リラでした。一体どれくらいの値段なんじゃー? 良くは分かりませんが、話によるとライカIII型の半額程度とのことです。
 そうそう、忘れちゃいけませんが、このクリスタル53の後期型の頃には、クリスタルRというモデルが併売されまして、四角い窓の一眼式距離計を備えていました。既にキナーリアで売っていたヴェガIIaの後継モデルかな? ちゅーのも、ボディはヴェガのものを発展させたような八角モノなんすよ。デザインはちょっと大きな四角い二つの窓が近くに並んでることもあって、あんましカッチョ良くはないです(『クラシックカメラ専科』No.43「Viva!イタリア」参照)。
 ところで、このクリスタル53のデザインはどう見ても奇妙っす。ワテはどうしても距離計の小さな丸窓が人の目のように見えるんですが、このカメラを見ているとパプア・ニューギニアの土着民の白い土を固めたおにぎりのような形をした大きな仮面を思い出してしまいます(←なんじゃそりゃ〜)。その、ちょっと外したデザインがこのカメラの大きな魅力なんですが、考えてみるとイタリアのカメラにはこうしたものが非常に多いですね。同じイタリアでも、有名なスーパーカーとはギャップ多し。

【追記】なーんかクリスタルの顔立ちがワテには違和感なくなじみのあるものに思えて仕方がなかったんですが、はっと気付きました。これはトプコンホースマンVH-Rとそっくりじゃん! なーるほどねぇ。

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This is the camera that the production was started with the Chinagria Domenico in 1953, and the highest peak model of the Kristall series. The design of the body doesn't change from formerly fundamentally. As for any Leica copies of Italy, there are many original things, but the camera made of Chinagria was comparatively ordinary. However, this Kristall 53 keeps the change system of the finder view rate and even the design face is overflowing to the Italian character. About the finder, when we see it head-on, the big view finder is conspicuous. The lever that is attached to right side is the thing for the change of a view. This covers to 28mm-105mm lenses. Yet, there isn't a change in magnification itself, this system is the type that expands and also narrow the frame. Therefore, the image that is reflected in the finder becomes a fairly small, in the case that it was set up to 105 mm. The top cover became a trapezoid and high by this finder change system.
The Steinar or Krinar 5cm F3.5 made in Italy, the Som Berthiot 50mm F2.8 made in France and the Schneidar Xenon 50mm F2 made in Germany were prepared as standard lenses.

The image proffer: Mr.Marco Antonetto

KristallRimage.jpg Kristalllogo2.gif

クリスタル R クリナー50mm f3.5
KRISTALL R Krinar 50mm f3.5

 アフィオムが撤退してWegaの名をそのまま引き継いでキナーリア・ドメニコが製造&販売していましたが(ちゅーか元からそうしていたと思われ)、53年にクリスタル53ができてデザインが一新されると、クリスタル3sもまたそっち系のデザインになりました。でも、ヴェガはしばらくクリスタルの名前ももらえない上、デザインの変更もなく、一人ぐっすん状態でした。でも、一番下のモデルだけ名前がヴェガなのは普通に考えてみれば違和感タップシです。 KristallR2.jpg
KristallR3.jpg  で、54年になるとキナーリア・ドメニコはヴェガのボディを変更してクリスタル53の路線に向け、名前もついにクリスタルに変更しました。こうしてクリちゃんRの出来上がり。名前だけ変えたのでは芸がないですから、一眼式距離計のファインダーを新たに設計しましたが、軍艦部は基本的に変わらんので、基線長が短過ぎて精度がメチャ悪そうです。実測でたった3cmしかない上、倍率も0.8倍程度ですからねぇ。
 一眼式になってピント合せは楽になったかと思いきや、距離計窓側はオレンジの着色がキツイ上に面積が広いため、はっきし言って見ていてウザイっす。視度もちょっと弱い感じですが、補正できないので自分の目を鍛えねばなりません。
 シンクロ接点は正面に二つありますが、これは底蓋を外すと見えたシンクロの切り替えスイッチを省いたことによるものなのですな。
KristallR4.jpg
 その他には変更点はなし。あえて挙げるなら、巻き戻しノブが引っ張り上げられるようになったこと、シャッターダイアルの形状がかすかに変わったことなどが挙げられますが、どうでもいいレベルの変更と言わざるを得ません。
 レンズはクリナー名になっていますが、事実上ステイナー/トリクサーと同じ3枚玉だし、絞りだって大陸絞りのままだし、結局はヴェガIIaのファインダーをちょいと手直ししただけのモデルなんですな。
 なお、このカメラ、斜陽のクリスタルから売りに出されたモデルでして、全体でも300台に満たないようです。ですんで、『Made in Italy』や『La Produzione Delle Fotocamere Italiane』のどちらにも掲載されていないんですよ。

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