FOTOCAMERE ITALIANE-HERMAN

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フォトテクニカ・エルマン・オリンピック スーパースペシャルTRT 50mm f3.2
FOTOTECNICA HERMAN OLYMPIC Super Special TRT 50mm f3.2

Herman Olympic
Herman Olympic

 1955年にトリノのフォトテクニカで発売されたレンズシャッター式の距離計連動カメラ。何だかモナカのような姿のカメラですが、このカメラ、レンズシャッター機のくせに意外と大きく、普通にバルナックライカ程度はあります。高さはバルナックを超えちゃってます。重みも結構あって、「ほう、オヌシなかなかやりそうじゃのぉ」と言った感じです。
 正面から見ると左にノブがないので、巻き上げはオリンパス・ペンのように軍艦部に埋め込まれて、背面にノブの頭が出ているのかと思いきや、後ろから見ても何もない。実は右側のやつが巻き上げノブで、通常とは逆に付いてるんですよ。で、巻き戻しノブは底蓋にあって、バルナックライカなどでは底蓋のロックになっているつまみに付いたダイアルと同じ格好をしたノブが見られます。ライカマニアの皆さん、底蓋を開けようとしてここを回しても虚しさばかりが残りますよ。
 巻き上げノブは大形ですが、低くて指の掛かりはイマイチ。ここが一般のカメラの巻き戻しノブのように持ち上がるから、「あれ?やっぱ巻き戻しなのかい?」と混乱しますが(ウソ)、これは巻き戻し時のスプールのロック解除のために付けられたものなのですね。巻き上げノブを引っ張り上げて、スプールを外してしまってフリーにするとは、大胆な発想ですね。これなら余計なパーツを使うことなくロックが解除されるのは確かです。

Herman Olympic

Herman Olympic

 シャッターは自社銘柄のTECNOR RAPIDですが、B.1/25〜1/300秒までしかありません。50年に登場した距離計の付いていないエルマンは、1/250秒が最速でしたから、若干の向上はあるのでしょうが、やっぱ低速シャッターと1/500秒は欲しいっすね。
 シャッターチャージは巻き上げと連動していないので、いちいち鏡胴脇のレバーを上げておかねばなりません。「はいっ!先生、55年なのに遅れてると思います!」と学級委員長のトプ子ちゃんに言われちゃいそうです。
 レンズはその名もスーパースペシャルと称するもので(これまた大胆な名前!)、開放f値は1:3.2という中途半端な値です。その構成は3枚玉で、“TRT”というのはトリオターの略なんだそうです。コーティングはシアン系の単層。しかし、一体どこがスーパースペシャルなんでしょう。ガウス型だと超ウルトラスーパースペシャルといったところでしょうか。でも、鏡胴のカラクリは面白く、沈胴式なのですが、別段引き出してロックする機構はなく、絶えずスプリングに押された状態なんですよ。

Herman Olympic

 では、どうやってレンズを畳むのかと言ったら、スプリングに抗して鏡胴を落とし込み、その状態で基部のヘリコイドを無限遠より更に回してやると固定される訳。ですので、使う時にこれを解除してやると、ビョ〜ンと頭が飛び出てきます。ある意味スプリングカメラと言う訳ですね。
 そんなエルマン・オリンピックですが、肝腎の写りはどうかと言うと、条件が整った場合はなかなかしっかりと写ります。ただし、フードを付けていても逆光ではフレアが上面に出やすいので、要注意です。色合いはナチュラルな感じで好感が持てますが、シャープネスは国産の優秀なレンズと比べてはいけません。
 で、おイタリアンは金ピカものがお好きと見えて、このようなテカテカ仕様も極少数だけ作ってます。レクタフレックスやCOMIのLUXIAなどにも金ピカ仕様がありますが、こう言うのはベンチーニがあえてやってくれたら「ほう、オヌシ、シャレが分かっているのぉ」と口から出ちゃいそうです。まあ、このHermanもそんな高級機でもないので、ある意味シャレの世界ですね(^o^)。と言っても、今となっては生産台数の少なさからカメラの質に比べて相場は高いのですが、何とこの金ピカモデルに至っては2500ユーロクラスだそうです。スゴイでしょ。ご覧の通り、グッタペルカも色違いがありまして、ひょっとすると青いやつや緑のやつもあったかも知れないです。しかしまあ、シャッターボタンやシャッターチャージレバーまで金ピカ。ここまでやるかと言う徹底ぶりです。ファインダーまで金色に見えそうです(笑)。

Gold Herman Olympic
Special thanks for Mr. Watanabe

 ところで、このカメラの名前であるHermanは「ハーマン」という英語風の読み方よりも、「ヘルマン」という欧風の読み方が適しているようですが、何でもイタリーでは「H」で始まる単語は基本的にないそうで、そうした場合「H」を省いて読むのだそうです(50へぇ位?)。ですので、このカメラも現地では「エルマン」。ここでもそのように書かせて頂きました。
 それにしてもこのカメラの距離計にしろファインダーにしろ窓が小さいですね。ふと思ったのですが、何だかこれ→( ゜д゜)良く似てるんですけど…。
This is the rangefinder camera with lens shutter that was developed with the Fototecnica company of Torino in 1955. This is big unexpectedly, although this camera is lens shutter camera, the size is as much as the Leica. The height exceeds the Leica. There is not a knob at left side when we see it head-on. Actually the knob on the right side is the knob for wind up. The roll return knob is in a bottom cover. The shutter is "TECNOR RAPID" made by own company, but there are only B. 1/25〜1/300 seconds in it. Moreover, we must finish raising the lever of the lens trunk side, because the shutter charge is not interlocking it with winding up. This lens name is "super special" and the light value is "1:3.2". The constitution is the Triplet type of 3 sheets 3 groups. The lens coating is very simple, there is only the cyan coating.

フォトテクニカ・エルマン コリストカ・テクナール 5cm f3.5
FOTOTECNICA HERMAN Koristka Tecnar 5cm f3.5

Herman

 こちらは48年発売の、オリジナルなモデル。スペックはとてもシンプルで全然「これ」と言うところなどないんですが、不思議と存在感があるんですよねぇ。上記の「オリンピック」とは基本的に同じボディ周りですが、細かなところで色々異なっていまして、一見同じように見えるフィルム巻き上げノブもこちらの方が若干背が高いんですよ。その前に軍艦部の基本デザインは変わらないものの、エプロン部の板がすっかり見えないのは明らかに別ですね。
 もうちょっと違いを述べておくと、沈胴式の鏡胴は同じなんですが、マウント部に入っているヘリコイドの形状が異なり、指を掛けるためのレバー状のノブは見られず、ただリングに滑り止め加工が施されているだけになってます。とは言え、個人的にはこちらの方がすっきりまとまっていて格好良いと思います。
 レンズは見た目にオリンピックと同じものっぽいですが、こちらはノンコーティングで開放値もF3.5と言う具合にわずかに暗くなってます。名前もコリストカ名ですが、製造元は間違いなく同じでしょう。

Herman

Herman

 シャッターや絞りでの変更はなし。このレンズシャッターは日本製のものでは一般的に見らる5枚羽のものとはことなり、2枚羽のタイプです。ただし、簡易カメラの単純なギロチンシャッターとは異なって、斜めに上下の羽が開いた後再び閉じるハサミ形の運動をするもので、なかなかしっかりとしたシャッターです。
 このカメラの最も特徴的なパーツはヘリコイドを兼ねたロックを回して外すと、沈んでいた鏡胴が勢い良く飛び出てくるところなのはオリンピックと同じ。もうスプリングカメラと呼べちゃいそうですが、35mm判のライカ風ボディデザインを持ったカメラでこんな機構を埋め込むのは大胆な発想ですよね。

フォトテクニカ・バキーナ クリッペルタール 75mm F9
FOTOTECNICA BAKINA CLIPPERTAR OPTIK 75mm F9

Bakina

 うひょ〜、こりゃベンチーニやフェラーニアの大衆機なんぞ相手にならないくらいの「超」単純カメラのお出ましですぞー。マジでここまですごいものを「光学・精密機械」と呼んでいいものなんでしょうか(←いいえ、ダメです)。 このカメラを製造したフォトテクニカって、名前こそ立派な精密機器メーカーっぽいんですが、実際に作っていたものはこうした単純なカメラがほとんどで、上記エルマン・オリンピックが「まあちょっとは頑張りました」と言うレベルなんすよね。それにしても、こんなものを立派な「カメラ」として買っていたなんて、イタリアはスゴイ。
 おっと、忘れてましたが、このカメラは46年発売のシンプレックス(Simplex)の姉妹機で、同年の発売だそうです。シンプレックスは127フィルム使用の4x6ベスト判でしたが、こちらは4x3のベスト半截判になってます。また、ファインダー周りにプラスチックの枠が設けられている点もちょっと異なりますが、4x6のファインダーの枠に、そのままプラスチックのカバー付けただけでしょう。ボディやレンズは基本的に同じもののようです。そうそう、巻上げノブはアルミからプラスチックに変更されてました。ま、どうでもいいんですがね。

Bakina

Bakina

 名前は「バキーナ」で、意味は当初良く分からなかったんですが、何でも「おばかさん」みたいな意味のくだけた表現なんだそう。しかし、カメラに“おばかさん”とは…。
 レンズは焦点距離がはっきりしない単玉ノンコーティング。シンプレックスとレンズ名が変わらないところからすると、75mmかと思われます。でも、4x3だから、60mm程度なのかもしれないです。ちなみに開放値はF9ですが、開放も何も絞りがないので、これオンリーと言うことになりますです。
 シャッターは多分1/30秒程度の単速で、エバーセットのギロチン型リーフシャッター。バルブが付いていて、鏡胴下のレバーを動かして切り替えますが、シャッターボタンは鏡胴にシャッター部から直接出ているレバーを押すタイプです。スプリングの力が強く、これが意外と重いんですよ。
 フィルム送りは赤窓式。4x3ですから、二つ窓が付いてます。撮ったらすぐ巻き上げておくか、撮る前に巻き上げるか、どちらかに決めておかないと必ず失敗します(笑)。

Bakina

Bakina

 フィルムの装填はボディをすっぽり抜いてから行います。底面のレバーを反対側に動かすと外れますが、この底面、マジでサバ缶みたいでしょ。缶切りで開けてみたくなります。ボディの作りは本当に缶詰製法で、薄い鉄板をぐるりと一周させて切れ目を折って閉じ、底蓋(ここはアルミ)を枠に沿ってはめ込んで噛み込んだ部分を綴じているというモノ凄さ。裏側にはフィルム圧板もないし、ただ「すげ〜!」とうなってしまいます(^∇^)v
 どうです?皆さん。トイカメラを除き、撮影を主目的とした立派な金属性カメラの中で、ここまで単純なものを過去に見たことないでしょ? レンズはただシャッターユニットの上に置いて、前から三つの爪が付いたリングをかぶせて爪を折って固定しているだけだし、そのシャッターユニットも鏡胴に三点のイボで固定しているだけ。そんでもって底蓋に刻まれているように、パテントものだそうですから、「一体どこが特許なのよ?」と頭を悩ませる、ある意味複雑なカメラなんですよ。あ、ま、まさか、このネジを使わない製法が特許なのか…??

フォトテクニカ・フィルモール F9
FOTOTECNICA FILMOR F9

Filmor

 こちらも単純なボックスカメラでしょ? フォトテクニカは基本的にこうした微笑ましいカメラを作っていたメーカーなんですよ。それにしてもシンプルだなぁ。シンプル・イズ・ベストと自分で自分を納得させようとしても、そりゃ無理な注文です。ただ、上のバキーナよりも少しだけ機能が多いのですが、それはハンドストラップが付いているところ。って、それだけかいっ!(笑)
 デザインは当時のコダックのカメラにも見られるように、結構派手な薄いアルミ板を前面にネジ止めしてあるんですが、意外とその他の黒い結晶塗装の質が良くて、なかなかの手触りです。かえって前面の装飾板はいらないですね。
 おっと、あまりにも単純なんで、このカメラの仕様を何も書いてませんでしたが、フィルムは120を使う6x9です。以上。←おいおい、それだけかよっ! と言っても、レンズには名前も書かれていないし、焦点距離もはっきりしないし、単玉絞り固定なのは当然として、その開放値も書かれていないんですもん。何を書けと言うのでしょう(笑)。まあ、あえて言うなら、シャッタースピードは「I」と「T」の切り替え式で、当然のことながらエバーセットのギロチンリーフシャッターです。で、やはりそのスピードはどこにも書いてないので不明。多分、1/30秒程度でしょう。
 右の画像にある中央部のボタンは箱の開閉用。スライドさせることで、反対側の巻上げノブが付いた方が外れます。

Filmor

Filmor

 ファインダーを覗いて見ると、びよーんと筒が長いことからも予想できる通り、像はえらく小さいです。縦画像なのはいいとしても、あまりに小さくて見づらさは天下一品です。しかも、接眼部を含めて周辺が真っ黒ですので、何も写っていない42型テレビ画面の中心部に、キャビネ判のプリントがはり付いているかのような見え方です。
 巻上げは当然赤窓式で、その赤窓も「ただ赤窓〜」と言う感じでして、全く何も工夫はありません。せめてスライドするカバーでも付けてもらいたかったです。
 中を開けて見ると、一応黒塗装が施されてはいるんですが、ペンキが多過ぎて垂れているまま乾燥したところも何箇所かあり、外側のハンマートーンのイメージとはギャップが大きいかな。中まで気にして作るべし!
 ま、それはともかく、イタリ―の50年代のご家庭では、こうしたカメラを持って旅行に行って色々ときれいな写真を撮っていたんでしょうが、今こんなカメラを構えていたら、間違いなくビデオを撮っていると思われるでしょうね。

フォトテクニカ・バンディ 75mm F9
FOTOTECNICA BANDI 75mm F9

Bandi

 第二次世界大戦を43年に終えたイタリアの街は、当然まだまだ荒れた状態で、やっと復興の兆しが見え始めた46年、フォトテクニカから珍妙なカメラが登場します。上のバキーナも大そう珍妙ですが、真面目に作られたコヤツもかなりすっ飛んでます。
 カメラのスペックは単純なBoxカメラで、120フィルムを用いる6x9判になります。レンズははっきり明記されてませんが、75mm F9の単玉が付いてまして、コーティングは施されてません。絞りは固定ですが、シャッターはしっかりB.1/25-1/50-1/100の4段階が設けられていまして、この点ではそこそこ撮影範囲の広いしっかりしたカメラだと言えます。まあ、見てくれは派手ですがね。
 では、一体どこが珍妙なのかと言いますと、この画像、どれもカメラケースに納めた状態になってるでしょ? でもそれは残念ながらハズレ。これ、ケースじゃなくボディに貼り付けられたシボ革なんでした! 「ええっ? シボ革がケース??」と悩んでしまいそうですが、金属のボディに貼り付ける革を厚くして、ストラップの革を側面にリベット止めし、裏蓋の革の下部をびろーんと伸ばして前面のカバーにしてしまい、それを裏蓋上部のボタンで止めるようになってます。いやぁ、しかしこれまた大胆な発想です。メカニカルな部分は平凡なのにねぇ(笑)。

Bandi

Bandi  まあ、考えてみればシボ革&ケースの革でダブルにするなら、これの方が効率は良いでしょうが、まさかそれを具現化しちゃうとは自由な発想のイタリアンデザインのある意味真骨頂。革の外郭部分の縫い目はただのダミーで、当たり前ですが、鉄のボディには縫えませんので、革の部分だけに入れたもの。革自体は接着剤でくっ付けられてますが、さすがに製造から60年も経った今では剥がれてきてます。でも、部分的にかしめてあるので、全体が剥がれてしまうことはありません。
 前面のボディカバーは鮮やかなコバルトブルーで、茶色の革と妙に馴染んでます。これも大胆なデザインセンスですね。
 ファインダーは上部に畳まれた反射式で、向かって右上のボタンを押すとぴょーんと横向きに立ち上がります。シャッターボタンは左側面下部のボタンで、絶えずケース(と言うかカバー)の外に頭を出してます。いつでも切れるエバーセット式シャッターゆえ、これがケースの外に出ているといつどこで押しちゃうとも限りませんが、考えてみるとそれを気にするのはケース内に納まっている時で、そうならばレンズは光にさらされないから別にシャッターをうっかり押しても問題なし。フィルム送りも赤窓式ですんで、巻き上げなければ別になーんもそれまでと変わりなく使えます。うーむ、理にかなった設計だ!(笑)。

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