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1948年に登場したII型ではLマウントが採用されました。そのため、I型ではマウント内側の向かって右横に距離計と連動するカムのコロが見られますが、機構の変更に伴なってここがII型では下に移動してます。また、さっきも言いましたが、I型後期からはビューファインダーの下にあった、距離計調整部の閉じ蓋ネジが消えましたので、II型にもこれがありません。つまり、ボディそのものはI型と同じような感じなんですが、実際、軍艦部の巻上げノブの下にある膨らみはI型そのもの。でも、シャッターボタンの受け皿や、ファインダー下の調整用ネジが消えているのは後のIII型と同じです。 |
II型の一般的認識ですとスローシャッターの有無以外ではIII型に酷似しているものがありますが、実際、その差は巻き上げノブの下のカウンターが隠れているかどうかくらいしかありません。反対にI型後期モデルにより近い訳ですが、このII型は正にそんな感じです。ファインダーの接眼部はI型と同じつながったものだし。でも、I型にせっかく付けていた吊り環用のアイレットがII型からは省かれてしまい、専用ケースがないと大変携帯しづらくなっちゃいました。 |
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このモデルのシリアルナンバーは“7”で、最初の“1”はII型から始まる捨て番。I型は“0”から始まります。正確にはII型は10004番から始まりますんで、本当に最初期のものだと分かりますでしょ。逆にIII型はどうかと言うと、今手元にある最後期のシンクロモデルも“1”の捨て番が刻まれてます。 |
ガンマのシャッターの中身はこんな感じです。ユニットごとすっぽり外れちゃいます。ギアの回転力が金属板を動かしていたんですが、こうした構造ならゴム引き布幕を使った一般的なフォーカルプレーン機構よりも電気化は楽だったんじゃないかな。
それに、この画像でコロが下に設けざるを得ない理由が良く分かりますよね。 |
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ガンマII型のシリアル番号は10099番が最終で、全体でも95台しかなかったので、そのスローなしモデルは本当に過渡期に極少数だけ作られた中途半端な位置付けのモデルになります。どのみち、あっと言う間にIII型が出てくる訳ですから、その存在意義はほとんどなくなっちゃうんですね。
ちなみに今付けているフロールは純正ではなく、後付けのものです。鏡胴回りからしてSUPER LYNXか何から外した改造品のようですが、本来はまずコリストカのヴィクトール・ガンマ55mm f3.5がオリジナルになるはず。ソム・ベルチオのレンズもガンマ独自の鏡胴に付けられて、売られていました。 |
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56年になって、ガンマもオフィチーネ・ガリレオのコンドールIIに遅れをとっていた分を取り戻すべく、フィルム巻上げをレバー式にして、同時にシャッターチャージもレバーに連動したセルフ・コッキング機構を組み込んだペルラII型を発売します。たかだかレバー巻上げにするだけにもかかわらず、ボディの角を丸くするのは、金型を一から作り直さねばならず、えらい大変なはずですよねー。でも、何でまたこんなことしたのか、不思議でしたが、それにはちゃーんと理由があったんですよ。 |
ペルラII型のレバーは面白いことに前から後ろに巻き上げるようになっていて、予備角はおよそ25度ほど引き出せるようになっています。で、一旦それを引き出すと、レバーは元に戻らなくなりますが、レバーの付け根にある小さな別のレバーを押すことで、予備角が解除され、元の位置に戻る仕組みになってまして、このカラクリを円盤部分に組み込んでいます。その円盤部分の上にはフィルムカウンターが乗っかっていて、巻き上げノブのようなつまみを回して調整します。 |
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左はレバーの予備角を引き出した状態での背面画像。正面もそうなんですが、ファインダー枠の周りにちょっと段差を付けてちょっとオシャレになっていますでしょ。でも、イメージはちっとも変わらないんすよねぇ。では、なぜわざわざ金型を変えてまで角の丸いボディにしたのかと言うと、これはレバー巻き上げ機構を組み込むために採った策で、どうにも仕方なかったんでしょう。 |
軍艦部を外すと、レバーの下に大きなギアが入っていて、シャッターボタンの後ろの辺りにある小さなギアと噛み合っています。そこからさらに内側に歯車が入っていて、これがシャッターチャージ用のパーツを回転させます。レバーの下にある大きなギアは、直接巻き上げスプールを回すのではなく、一旦小さい方のギアに移った力を利用して歯数の異なるギアを駆動させて軸を回転させます。だから、レバーの巻き上げ角は200度程度なのに、軸は340度ほど回転します。 |
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この歯車のおかげで端を従来の八角ボディにできず、丸くして逃げを作った訳なんですが、とても良くできてますよ。
そのレバー巻上げ機構のために、沈胴式の鏡胴は使えなくなって、立派なヘリコイドリングが入っていますが、従来のモデルの沈胴量は8mmではほとんど意味なしですので、わざわざガリレオ・コンドールIIのような機構を、無理して組み込まなかったのは正解でしょうね。
ペルラII型にも色々とグレードがあって、このベーシックなモデルではプロンターSシャッターが使われています。 |
ペルラIIを使ってみると、この“ひねくれ”巻上げレバーって思いの外使いやすいんですよ。人差し指はシャッターボタン上にあるので、中指でレバーの先端を引っ掛けて後ろに引くんですが、それが意外に無理のない位置にあって、結構迅速に巻き上げられます。ただし、巻き上げ量自体はかなり多いので、レバーが目の位置まで近付いちゃうために、やはりファインダーから一瞬目を離さざるを得ませんがね。
軍艦部を固定するネジは妙なカラクリが使われていて、一瞬普通のネジみたいな丸いものは細長い筒の先端で、雌ネジになっています。これを上から差し込んでおいて、下から普通のマイナスネジを噛み合わせて固定するんですが、その面倒くささの割にまず気付いてもらえない寂しい工夫です(笑。 |
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ガンマ・ペルラの売れ行きが好調だった1953年、ガンマは大きなビューファインダーはそのままに、距離計を外したステッラ(Stella)を発売し、より買い求めやすいモデルを揃えるようになりました。そして、55年にファインダーを小さくシンプルな逆ガリレオ式ファインダーを中央に一つ置いて、シャッターやレンズもより安価なものにしたモデルを発売ましたが、これがアルバです。アルバは別にアトム(Atom)名でも売られましたが、中味は変わりません。多分、卸先のディーラーによって名前を使い分けていたような感じですね。 |
アルバのシャッターはB.1/25〜1/200秒のプロント(Pronto)を装備したF型とB.1〜1/300秒のプロンター(Prontor)SVSを備えたB型に分かれ、前者にはエンナ社製のエンナゴン(Ennagon)45mm F2.8が、後者にはシュナイダー社製ラジオナー(Radionar)50mm F2.8が付いてまして、どちらも3枚玉なんですが、やはり位置付けは後者が高級なモデルとして扱われていたようで、価格も前者が16,900リラであったのに対し、後者は23,900リラでした。 |
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ここにアップしたものは5枚羽のプロントシャッター付きのF型ですが、このカメラの最大の特徴はセルフコッキングを達成していることです。これはペルラでもやらなかったことなんですが、実はアルバは固定鏡胴を用いているために、わざわざ複雑な機能を加えることなく巻き上げノブとシャッターを連動させることが可能だったんですね。それにしても巻き上げ感は軽く、一時わずかにゴリゴリっとする以外はシャッターチャージをあまり感じさせないのは立派ですね。それにセルフタイマーも付いてますし。 |
絞りはf2.8〜f16までの6段階の10枚羽で、レンズは前玉回転式の3枚玉ですが、これが思いの外良く写るんです。前玉にアンバー系、2枚目にマゼンタ系、3枚目にシアン系のコーティングが施されていて、この辺りの細かさはさすがドイツ製と言う感じ。ヘリコイドの回転量は100度くらいしかなく、2mから∞までは45度程であるから、3m程度に合わせて絞り込んでおけば、パンフォーカス的に使えます。それでいてシャープネスもなかなかですんで、街中のスナップ等ではかなり気軽に使えるカメラですね。 |
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巻き上げは当然自動巻き止めですが、安価でコンパクトな35mm判カメラに良くありがちな、太いドラム形の巻上げスプールを一定量回転させる安直な機構は採らず、しっかりとパーフォレーションを利用したスプロケットの回転数で停止位置を決めてます。
内部の結晶塗装もとてもしっかりしていて、鏡胴から感光面に至るまで、内面反射を防ぐために円形から四角形へと変わる一体成型の壁がはめ込まれていまして、この点ではペルラよりも優れているんですよ(えっへん)。 |
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56年のペルラIIからガンマはボディの角をバルナック風に丸めましたが、そのボディを元に作られた廉価版がこのアトラスで、スペック上では簡易カメラに入る大変シンプルなカメラになるんですよ。これでガンマはペルラ>ステッラ≧アルバ>アトラスと言う4段階のラインアップを揃えることになりました。
アトラスのスペックは字面ではベンチーニの35mm判と何ら変わらないレベルのもので、いかにも簡易カメラっぽいです。すなわち、距離計のない逆ガリレオ式ファインダー、P(バルブ)・1/30・1/100秒の3段階だけの2枚羽シャッター、単玉レンズ、F6.3とF11のみの絞りと言う具合です。 |
でも、ベンチーニ・コロール35と並べて見ると、作りそのものがまず違うことに気付きまっせ。持った瞬間にそのずしりとした重みもさることながら、裏蓋を開ければパーフォレーションに噛み合うスプロケットの存在が目に入ってくることから、「やはりしっかりしたメーカーのものは違うんだな〜」と、極当たり前の機構に感心しちゃいます(^∇^)。シャッターもたった2速しかないのに妙なところに凝っていて、低速側(1/30秒)にセットすると「ジョッ」と言うガバナーの音が聞こえてくるのもエバーセットのギロチンものとは違いますね。 |
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普通、安価なカメラではシャッタースピードを変更する場合、中のスプリングの張力を直に変化させて、それだけで速度を変更する場合が多いのですが、このカメラは安定した低速を確保するために、部分的に本格的なレンズシャッターの機構を採り入れている訳なんですね。
レンズは単玉ですが、色収差を少しでも減らそうとした1群2枚のアクロマチックレンズで、シアンコーティングも施されています。 |
名前こそGammarとなっていますが、ミュンヘンの刻印があることから、上級機と同様にドイツのエンナにレンズを発注していたんでしょう。絞りは一枚の円盤に大きさの異なる円をくり抜いた簡単なもので、絞り変更は鏡胴上面のレバーを左右に動かすだけです。
フィルムの装填は底面のくの字のレバーを回転させてロックを解除し、ここと一体になった裏蓋を外して行います。巻き戻しはシャッターボタンのすぐ手前にある小さなボタンを押しながらノブを回すんですが押し続けないといけないので、ちと面倒です。 |
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このように、ガンマ・アトラスは必要にして最小限の機構しか持ち合わせていない単純なカメラですが、それらの一つ一つが手堅い作りで、簡易カメラと捨て置くにはもったいない気もしますね。
ガンマはこれ以降、カメラの生産を終了してしまいました。当初しっかりしたカメラを作っていたのに、安直に簡易カメラを作って失敗した訳です。日が沈む前に空を赤く染める姿は、それはそれで華やかなものですが、このガンマ・アトラスの場合、釣瓶落としで沈みかかった秋の夕陽のようで、何かもの寂しい雰囲気も感じられてしまいますね。正に「夕陽のガンマ」と言うカメラです。 |