FOTOCAMERE ITALIANE-Ferrania
フェラーニア フィルマ 7.5cm F11 |
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この真っ黒なモナカのようなカメラは、正確にはフェラーニア名でカメラを生産する前に作られたモデルで、いわばフェラーニアのカメラ部門の前身であったトリノのフィルマ製になります。戦前の35年にフィルマでは生産が始まりますが、38年にフィルマがフェラーニアに吸収されて、ロゴだけ「Ferrania」に変更されてそのまま売られてました。これは127フィルムを使う4.5x6のベスト判。同じデザインで120フィルムの6x9判があり、これもフィルマ / フェラーニア双方の名で売られてました。ですから、事実上初のフェラーニアのカメラと言っても間違いはないでしょうが、いやぁ〜、やっぱどう見てもモナカですねぇ〜(笑。 | |
一目でお分かりでしょうが、これ以上有り得ない程の単純カメラです。レンズは75mmの単玉で、当然ノンコーティング。固定焦点で絞りもf11で固定。でも、フィルムの焦点面にカーブすら付けていませんが、ローラーは一応入ってます。 で、そのフィルム送りは赤窓式。向かって左横の下にあるノブを回してフィルムを巻き上げますが、このノブはBoxを開く際には引っ張り出さないと外れません。いわばロック解除の最後の確認用みたいな役割も持ってます。 んじゃ、普通のロックはどうなってるのかと言うと、これは両サイドの中央よりちょい下にあるふくらみがカギで、ワテが初めて手にした時は「???」でした。 |
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何しろモナカですから、突起がほとんどないのですが、微妙なふくらみがサイドにあって、ここが押せるようになってます。それを両方から摘まむように押すと、Boxのロックが外れるんですが、前にも申しました通り、巻き上げノブが最後の砦になって、Box自体はこれに引っかかって外れません。野球のボールくらいの大きさですんで、そのカラクリが分かる前にイライラして剛速球で投げてやりたくなりました(←ウソ〜)。 ボディはほとんどネジが使われませんが、前面のカバーを止めるネジが左右に見えます。あとは内側のフィルムストッパーにたった一個。でも、「Fototecnica Bakina」の全部で一個には負けます(笑。 |
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ファインダーは反射式で、なーんのフードもないですから、日中は見づらいですが、一応擦りガラスが使われているのは良し。 とにかく突起を作らないように角にも丸みを持たせているように、徹底した「モナカ」になってますが、ボディのロックさえもビニールのボディカバーで分からなくしてしまう徹底ぶり。そのカバーの模様までモナカってますから、ここまで完璧なブラック・モナカはないでしょうなぁ。 |
フェラーニア アルファ 80mm? F9 |
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フェラーニアは今では3M傘下に入ってますが、イタリアでフィルムっちゅーたらフェラーニアを指すほどなんすよ。で、コダックやアグファと同様にしっかりとカメラも作っていたんすが、その一号機は1935年のその名もズバリ"Box"と言う箱型カメラで、その後FilmaなどのBoxカメラも売られました。んでもって戦後の1945年に出たライカタイプの形状のボディを持つ金属カメラの第一号がこのアルファなんです。分かりやすいネーミングじゃー。 | |
機構はフィルムメーカーの作るカメラの常で、非常に単純っす。つまり、ノンコーティングの単玉で絞りがF9固定のレンズと、多分1/30秒の単速シャッター(I)にバルブ(P)を加えただけのエバーセット式シャッター、フィルム送りも赤窓式と、まあ、簡易カメラの王道を行くっちゅー感じ。でも、当然目測ながら、フォーカシングできるのは立派かも。後のこの手のカメラからは焦点も固定と言うものが多いですからねぇ。 | |
フィルムサイズは127で、4x6判になりま。裏蓋は蝶番で開き、裏にはちゃっかり自社製フィルムの絵がプリントされてま。ボディは薄い金属製で、ぐっと推したらつぶれそうな印象です。シボ革も貼られておらず、ただザラついた塗装が施してあるだけなんす。 | |
フェラーニア ベータ 80mm F9? |
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次にベータですが、こいつはフィルムサイズが120フィルムを使う6x6判で、ちょっと大柄になります。でも、アルファや下記のエータと決定的に異なるのは、ボディがベークライト製なことなんですな。何でこいつだけ素材を変えているのか理解に苦しみます。 これに対して機構は全く変わらぬ単玉・単速ギロチンエバーセットの赤窓式巻上げです(たった22字で説明完了〜)。フィルムサイズを変えて色々なバリエーションを揃えておきたかったのでしょうね。でもやっぱ素材を変える必要はないのに…。 |
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レンズは単玉なのは申し上げ候ですが、明るさははっきりとした表記がなく不明。ただ、アルファとエータは固定鏡胴なのに対して、こいつは1cm程の沈胴式になってま。で、表記は明るさではなくて焦点距離がF=80となってまして、一般的には大文字のFが明るさになるのですが、その辺はあまり気にしていないようです(ワテもでやんす〜)。でもやっぱこれだけ表記を変える必要はないのに…。 | |
裏蓋を開けるとこいつにもフェラーニアのフィルムのマークが。他のフィルムを入れちゃダメですぞ。 シャッターはバルブと1/30秒程度の単速ですが、切り替えはちょっとだけ高級感のあるレバーがレンズ脇に付いてます。でもやっぱこれだけレバーの形状を変える必要はないのに…。 |
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フェラーニア エータ 80mm? F9 |
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こやつも上記アルファやベータと同年に出たモデルなんですが、モロ廉価版です。「廉価版って、アルファから何を省けるの〜?」と疑問に思われる方もさぞ多いことでしょうが、省いちゃったんです、軍艦部を! 大胆でしょ? で、完璧なモナカ型の蝶番式になり、上部にビシッと切れ目が横に走ってます。ファインダーブロックも見事に取って付けたようなしょぼいものになりましたが、光学系は全く変わらんので、見え方は同じです。元からしょぼかった証明ですな。 | |
も一つ大胆に削ったところがありまして、それはフォーカシング機構です。アルファでさえプレスして溝を付けたような、最高にしょぼい(←なんか矛盾する表現)感触のヘリコイドだったんですが、それさえも省略ですから、こうなると「良くやった」と褒めてやりたくなります。巻き上げノブもプラスチックになってますし、この徹底したしょぼさはもう並じゃありませんな。物資の不足した終戦直後とは言え、日本では考えられないでしょう。 | |
でもやっぱ裏蓋を開くと自社フィルムの絵だけは忘れずプリントしてます。商魂たくましいです。 ところで、製造年は『Made in Italy』によるとアルファが1945年となってるのに、別の本ではアルファもエータも1940年となってるんですよ。どっちが正しいのかは不明。もう知らん…。 |
フェラーニア ゼータ・ドゥプレックス / ドゥプレックス2 105mm F11 |
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この機関車トーマス的なBoxカメラはゼータと言いまして、1945年に発売された面白い機構をちょろっと備えたモデルなんですな。何が面白いって? それは秘密、と言うのはウソで、後でお話させて頂きま。 実は同年によりシンプルなゼータの初期モデルが発売されてまして、次に左の黒いゼータ・デュプレックスが、翌46年に右のグレーの(黒もあり)ゼータ・デュプレックス2が発売されたんですよ。 |
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レンズは焦点距離が明記されてませんが、『LA PRODUZIONE DELLE FOTOCAMERE ITALIANE』によると105mmとなってます。信じましょう。んで、絞りは一応2段階になっていて、にっこり笑った口のようなところのレバーを真ん中にするとF11、左にするとF16になります。じゃあ、右は?と言うと、こちらにするとイエローフィルターが登場! おっと、カラクリその1をもう暴露しちゃった。ちなみに2型はレンズ左にレバー移動し、F11・F16・F22と単に3段絞りになりにけり。 | |
シャッターはおそらく1/20秒くらいの単速で、バルブとの切り替えはデュプレックスが向かって左側面のシャッターレバーの下にありまして、デュプレックス2はレンズ右横のつまみを移動させるようになってます。 フィルムの装填は巻き上げノブを引き抜いて向かって右側面のボタンを押して箱を外します。中を見るとフィルムレールの上下のところに変な板がひらひらしてますが、これが初期モデルにないフィルムサイズ変更のマスクでして、フィルムセット時に開いておけば6x9、閉じておけば6x4.5になります。あ、最後のカラクリを言っちゃった。もうありません。 |
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フィルム送りは定番の赤窓式。フィルムサイズが変更できるので、窓が二つ用意されています。でも、これも両者で形式が異なってますが、やはり2型の方が洗練されてますね。それにしても、「Z2」と大胆にプリントされてますが、バイク好きのワテには「ゼッツー」と言うとバンカラなカワサキの男臭いナナハンを思い出しちまいます。でも、フェラーニアではずいぶん可愛らしいカメラになるのですなあ。シャッターを切ったら「フォンフォーン!」と集合管のような音がしたりして。 |
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フェラーニア アストール ガリレオ・テーログ7.5cm F4.5 |
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フェラーニアは一部のものを除いてしっかりとしたカメラは作っていませんでした。純フェラーニアと呼べるものの中では上記ファルコSと、このアストールだけ。コンドールIとII以降で、精密なシャッターを持つものはリンチェがありますが、中味はドイツ製。結局は自社で生産したそれなりレベルのモデルは50年代前半で終了〜。おイタさんは引き際が潔いんですね。このアストールも52年発売で、後継機種は一切作られていません。 アストールの意味は英語のHAWKと同義の鷹を表しますが、フェラーニは鳥の名がお好きだったようです。 |
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ボディは自社のものですが、シャッターはプロンターSVが、レンズはオフィチーネ・ガリレオのテーログが使われていますので、主要部分はやはり他社製なんですね。 で、このプロンターシャッターはB.1〜1/300秒までの8段階で、古い割に未だにしっかり作動中です。ガリレオ製のレンズ、テーログもうっすらとシアンコーティングが施された3枚玉で、結構良く写るんで気に入ってます。ピント合わせは目測ですが、逆ガリレオ式ファインダーは約0.5倍ながらスッキリ。 |
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まあ、シャッターやレンズは見慣れたレベルのものですが、ボディは面白い仕掛けがありまして、このカメラ、実は120フィルム使用の6x6判なんですよ。一見35mm判っぽい感覚ですが、35mmでは巻き戻しノブになるはずの向かって右のダイアルが巻き上げノブ。巻き上げは単純な赤窓式です。で、反対側のダイアルは巻き戻しノブではないんですが(←120なんだから当たり前)、これがただの飾りではなく機能していて、面白いカラクリを演出してくれるんですぞ。 | |
そのカラクリとは、このノブを時計回りに回せばすぐ分かるんですが、最初はビックリこきます。と言うのも、折り畳まれていた鏡胴が「ジャキーン!」と飛び出てくるんですもん。つまり、金属製鏡胴のスプリングカメラだった訳。我が東京光学の幻のファーストモデル、「LORD」も金属2段鏡胴のスプリングカメラだったんですが、このアストールの鏡胴も2段に折り畳まれるようになっていて、ロードのような距離計連動機ではありませんが、シャッター回りがすっぽり鏡胴内に納まるのは見事です。 | |
他にこれと言って目立った面白さはありませんが、この頃のレンズシャッター機はシャッターチャージが巻き上げに連動してませんので、一旦シャッターを切ったら、二重露光防止のために、軍艦部上面のレバーを一度横にしないとシャッターボタンが押せなくなります。押せない状態ではファインダー内部に赤い半透明の板が現れ、シャッターを切った後であることを示してくれますが、どうにも面倒くさいことには変わりなかったりして。 |
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フェラーニア タニット |
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何だか上のデルタと似たようなデザインのカメラですが、こちらは4x3ベスト半截判サイズの、一回り小型のモデルです。このモナカ型軍艦部は、フォトテクニカのバキーナにも通じますが、イタリア人はモナカが好きだったのでしょうか(←何をいう〜) 発売年は、ある本では47年となっていて、またある本では55年となっていまして、一体どっちなんじゃい(`д´)。しかも執筆者が同じだったりして。ま、この辺は簡易カメラだけに、RF機とは力の入れようも異なるのでしょうね。見た目の作りからしてまず55年が正解でしょう。 |
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シャッタースピード、固定絞り値ともに表記がないので一切不明ですが、これもフィルムフォーマットからして多分60mm F8か9程度のカメラで、スピードも1/30秒でしょう。レンズを見るともちろん単玉ですが、ノンコーティングですんで、ひょっとすると47年というのが正解かな。ちなみにこんなカメラですが、意外と入手は困難なようで、コンドールII程度のレア度のようです。国産機でもどうでもよろしいモデルは意外と出てこないものですが、あちらも同じなんですね。 | |
シャッターボタンが斜めに付いているのはなかなかおしゃれ。それで、フィルムの装填も押さえの金具が手元に引き出せるのは、とっても簡単で良いです。こいつはなかなか工夫されていて、狭いスペースを有効に使ってますね。 後は赤窓式巻上げ+目測式ピント合わせ+ギロチン式単速シャッターと、簡易カメラではお決まりの機能しかないです。 |
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ストラップ金具を兼ねた裏蓋ロック金具はクロスターなどのカメラも採用していますが、逆さになった時に裏蓋が取れてしまわないか心配です。しかし、こうしたカメラは中身がなくってえらく軽いので、そんな心配も無用ですね。 ちなみにタニットは古代神話に現れるカルタゴの月の女神タニスのことだそうです。 |
フェラーニア ゼフィア シュタインハイル・カッサー45mm F2.8 |
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フェラーニアが最初に35mmカメラに手を伸ばしたのが59年のリンチェ(Lince)からなんですが、このゼフィアも同時に似たデザインで作られました。位置付けはリンチェの廉価版みたいなもので、手にした瞬間「ん? 軽ッ!」っと思わず声が出てしまいそうです。それもそのはず、軍艦部や底部こそ金属のカバーが付いていますが、本体はほとんどプラスチック製。オマケにせっかくの金属カバーの部分も真鍮ではなく薄いアルミっすからね。そりゃもう軽いの何の。でも、基本的な構造はしっかりしてるのが不思議。 | |
レンズはシュタインハイル製のカッサーで、これは後のリンチェ2と同じ銘柄ですが、3枚玉なのに随分コーティングの具合が淡いように感じますね。 フェラーニアの35mm判のカメラは、どうやら提携していたドイツの工場のものをそのまま使って、外見だけフェラーニアが主導したようです。実際、50年代のカメラにしては随分垢抜けてますでしょ? 軽いっすが…。 |
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シャッターは4枚羽のしっかりしたものですが、“RECTAMATIC”と称した絞りとの自動的と言うか勝手な連携があって、絞りをf2.8〜f4の時は1/60秒、f4〜f8のゾーンで1/125秒、f8〜f16のゾーンで1/250秒に、それぞれ強制的にセットされてしまいます。f4・f8だけ二つのシャッタースピードが選べることになりますが、絞りリングに描かれたお天気マークを鏡胴側の風景画に合わせて使うこともできます。でもASA80指定ですから、そんなフィルム今はないので適当にいくしかないです(笑)。 | |
ファインダーはリンチェのような高級感は皆無で、ただのガラス板。コーティングも何も施されていない素通しものですから、「なくてもいいじゃん」と思いますが、まあ、仮にもカメラは精密機械ですから、ちょっとは高級感を出したかったんでしょう。軽いっすが…。 ゼフィアは英語で言うZepyer(ゼファー)、スペイン語のセフィーロ (Cefiro)と同義の「やわらかな西風」を指します。 |
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フェラーニア・ロンディネー リネアー7.5cm F8.8 |
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1948年、フェラニアはファルコのようなスプリングカメラと単純なボックスカメラを作っていましたが、このロンディネーはボックスカメラの代表選手ですね。127フィルムを使うとてもちっこいカメラで、機構もベンチーニ並に単純です。でもデザインはさすがにイタリー。とても可愛らしい印象で、結構今になって人気が高いんだそうですよ。ちなみに当時は黒・赤・青・緑・茶という具合に、レザーの色を選択できたんですよ。 127フィルムを使いますが、サイズはスクエアではなく4.5X6cmで、縦長になります。こんな小さいカメラなのに立派でしょ? でも、厳密には4.2X5.7cmという感じですが。それにしても、この小ささで35ミリカメラよりも面積の大きなフィルムを使うんですから、考えてみると驚きものですなあ。 |
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ファインダーはご覧の通り上部に付いた枠を立てるだけの簡単なもの。ただし、二眼レフと古い蛇腹のスプリングカメラに付ける屈折ファインダーの合いの子みたいなファインダーがレンズの上にポツリと付いてるでしょ? これがこのカメラの可愛らしさを深めているような気が。はっきり言って別になくてもよろしいパーツなんですが、やっぱないとあまりにも素っ気ないデザインのカメラになります。でも使わん、まず使わん、やっぱ使わん、と言ったアイテムなんですが(^∇^)v フィルムの装着は上の画像のように横から中を引き抜き、そこに中判カメラで多いΩ形にフィルムを曲げてセット。フィルムの巻き上げは右手で横にあるノブを回し、背面の赤窓でコマ送りをチェックしながら行います。わざわざ書くまでもないほど単純です。 |
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シャッター速度は「1」と「P」とあるだけ。「P」はバルブですからいいとして、「1」って一体…。ま、見たところ1/30秒程度かなあ。絞りもなくて、明るさの表記もないんですよね。レンズ名だけはLINEAR 7.5cmとプリントされてますが、ただの単玉です。シャッターの後ろに小さなくり抜かれた穴があり、多分F11くらいに固定されてるのかなと思ったら、ある本でF8.8であると記載されていました。中途半端ですが、これではASA100のフィルムですと曇天か室内でしか使えないですよね。低感度フィルムのない現代では使える範囲が大幅に狭まってしまいます。 | |
で、ロンディネーにはいくつかのタイプがございまして、フォーカシングできない初期型、フォーカシング機能が付いた中期型、シンクロ接点を備えた後期型となりまして、この画像のカメラは後期型になりますね。更に、上部のファインダーを省略したものもありまして、それは名前をコリブリ(Colibri)と変えてました。しかし、たかが1個パーツを外しただけで別モデルですから、「新型登場!」なんて言われても、当時の人は期待しなかったでしょうなあ。 なお、ロンディネーはツバメの意味で、コリブリはハチドリのことを指す名前だそうです。 |
フェラーニア・イビス プリマー75mm F9 |
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1950年発売の"イビス"シリーズのNo.1。でもって、単純度もNo.1っす。マジすごいっすよー。現時点でワテが所有する単純イタカメリストの中では、そーですねぇー、1位はべんちーに君のところのミニコメットちゃんですが、2位はフィロテクニカ家のサバ缶君とこのイビスちゃんのいい勝負。缶詰製法のサバ缶君はさすがにキョーレツですが、何せシャッターがBとIの2速ありますもん。それに対し、イビスちゃんはBすらないマジ単速。でも、沈胴式ですし、ボディの作りはこっちの方がいいし、結局どっちもいい勝負。 | |
しっかしまあ、よくもここまで割り切れたもんですが、沈胴にはナゼかこだわりがあるんですなー。75mmの単玉では確かにフランジバックがビョーンと長くならざるを得ませんから、こりゃ仕方がないですが、それにしてもイタカメには「何としても沈胴!」みたいな気風があるのも事実なんですよ。クロスターには1cmに満たない沈胴カメラがありますからねぇ。ちなみにこのイビスちゃんはただ引っ張り出すだけのタイプですが、スプリングのサポートがあっていい感じです。 | |
フィルムはお決まりの127で、4x6のサイズになりま。モチ赤窓式っすよ。んでもって、単玉の周辺部の歪みを補正するつもりで、焦点面をカーブさせてはいます。"写るんです"はプラスチックレンズでも非球面ですから、周辺部が補正されてるのは当然なんすが、イビスちゃんはレンズ側にはコーティングもなーんも施してないっすから、写りは推して知るべしです。でも、単玉って中心部はいい写りをするんですよね。あくまでも中心部だけっすが。 | |
フェラーニア・イビス 6x6 プリマー85mm F9 |
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上記イビスと同様、何だかアラブ文字みたいなネームの彫られたカメラでやんすが、これも立派なイタリアンでして、その名はイビス66。いびつではありません。このカメラはフェラーニア版のベンチーニ・コロールみたいなもんでして、シンプル度は120判では互いに覇を競い合うレベルですぞ。年代はこのカメラが1955年製造なので、かえってベンチーニに負けてるかもしれませんです。ボディの仕上げもアルミ・バフ仕上げのあちらの方が、明らかに勝ってるでしょうが、デザインは似たり寄ったりのレベルで、どんぐりの背比べですな。 | |
で、このカメラもシンプル過ぎて、な〜んの解説も必要がないんすが、一応スペックを記入しておくと、レンズはプリマーと名付けられた単玉の85mmで、ボディに表記はないのですが、絞りはF9だそうです。一見F2.8級のレンズに見えるんですが、単玉の常として、鏡胴内に小さな穴が空いていて、これが固定絞りになっているんですね。で、その前に付いているシャッターはエバーセットのギロチン式。これまた単速で、良くは分かりませんが、多分1/40秒程度のもののようです。別にバルブも付いていて、レンズ下部の爪を動かしてシャッターを変更するだけ。うーむ、シンプルだ〜。 | |
このカメラにはシンクロ接点が設けられていて、鏡胴を引っ張り出すと、鏡のような筒の向かって左側の側面にコソーリ穴が空いていま。 フィルム巻上げは6x6であることから、モロ単純な赤窓式。その赤窓も一切覆われることもなく、日差しが強い時に背面を日に当てていたら、変に感光してしまうでしょうなあ。間違いないっ! あ、一応、巻上げノブは逆方向には回らないように作られてます。←当り前じゃん |
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裏蓋はご覧の通り取り外し式。ストラップの取付金具を両方とも引き下げると外れますが、よく見ると裏蓋が曲がってるでしょ? 圧板もカーブしていてフィルムを曲面でセットしますが、これは単玉の周辺部の歪みを多少なりとも軽減させることが目的なんですなー。アフォなりに頑張ってるっちゅうこってす。 | |
んでもって、シャッターボタンはご覧の通りなるべくレンズシャッターに近付けるべく、妙に鏡胴に近いところにあるでしょ。おかげで軍艦部左側が妙にシンプルになっちまいました。ただ、唯一エライところは、このシャッターボタン、鏡胴を引っ張り出さないとシャッターから伸びる棒とかみ合わないんで、何度押してもスカスカ。んまあ、エライっつっても、これまた当り前なんすがね。ちと大袈裟に言っとかないと褒めるところがねーんです(ToT)。ちなみに、こちらはグレーバーヂョンだべさ。4x6にもありましたが、色以外なーんも変わったところがねーです。 | |
ところで、フェラーニアでは127フィルムを使った4x6判の上記イビスを50年に、ガリレオ・テーログレンズとプロンターSシャッターを備えた6x6判のアストールが52年作られ、デザインは前者、ボディは後者を利用して、後に作られたのがこのイビス6x6なんですなー。でも、せっかくアストールで焦点調整のできるしっかりしたレンズシャッターカメラを作ったのだから、イビスにもそれを盛り込んで欲しかったですのぉ。 なお、イビスはトキを指す言葉で、英語とも共通です。学名ではニッポニア・ニッポンですが、さすがにそっちの名は使われませんでしたね(笑)。 |
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フェラーニア・イビス 34 / 44 アクロマティコ 58mm / 65mm F7.7 |
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同じイビスでも、がらりと趣を変えたモデルで、1958年の発売です。イビスシリーズの最終モデルですが、同じデザインでイビス34ちゅうベスト半裁判の姉妹機が出とりました。で、こっちはその名の通り127フィルムを4x4のスクェアで写しま。それまでの真っ黒いびつ、おっとイビスとちゃいまして、軍艦部がそれらしくきれいに仕上げられていて、「ちと高級かも」と思わせるものがありますでしょ? でも、これが大したことないんだなあ、実は。だって、これ、ただのアルミのプレスだもん。メッキじゃないっすよ。 | |
まあ、とは言え、それまでのモデルからすりゃぁ格段に機能は向上してま。シャッターもB、1/50、1/100秒と高速側が一つ加わりましたし、絞りもf7.7開放(と呼んでいいものなのか〜)にf12が加わりましたからね。絞りっちゅーても小さな丸いくり抜きの板が出てくるだけなんすが。シャッターだってエバーセット式のギロチン君のだし、別段基本的にはなーんも変わってなかったりして。 | |
ちっちゃいファインダー接眼部の左にもっとちいちゃな穴が空いていますが、フィルムを巻き上げると下の赤い印が引っ込もうとします。これは新たな工夫です。でも、フィルム送り自体は当然赤窓式ですから、こんなもんあっても意味が全くないような気がしますねぇ。そうそう、赤窓の上に何やらパーツを引っ掛ける爪のようなものが付いてますが、一体これは何を付けるものなんでしょ? タニットにも付いてましたが、ケースで上から覆われちゃうし、意味不明です。 | |
こやつが先に申し上げました姉妹機のイビス34でやんす。やっぱ58年のカタログに出てますが、3x4判ゆえファインダーは縦長になってま。でも、面積は4x4に比べて必要以上に小さくなってるのはナゼ? シャッターやその他の機構は変わりませぬが、レンズは58mmが使われとります。また、赤窓も半裁判ですから、二個並んで置かれているのも違いと言えば違いですな。127フィルムを使うカメラだけあって、とても小さくて可愛らしいカメラで、上記タニットの直系の後継機種になりますです。 |
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ビローラ・ベラ |
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こちらはフェラーニアをドイツでライセンス生産したモデルで、上記イビスとイビス44の中間のモデルになります。形を見るとイビス44のファインダーを小さくして鏡胴を初期のイビスのように沈胴式にしたような感じですが、正にそのまんま。イビスのシンクロモデルのデザインを変更して新たなモデルとして出そうとしたフェラーニアが、ドイツの提携工場でライセンス生産させてそこの名で出したもので、背面に“Made in Germany”とあるものの、鏡胴基部の下側には“Ferrania”の刻印が入ってます。それにしてもドイツでもこんな簡易カメラが売れたんですかねぇ。 | |
で、どこが初期のイビスから発展したかと言うと、まずバルブシャッターが組み込まれたこと。思えば最初のモデルにはそれすらなかったんですからねぇ。次にヘリコイドリングが入って焦点合わせできるようになったこと。考えてみると初期モデルは固定焦点だったっすからねぇ。そしてアクセサリーシューが付きました。そう言えば初期モデルにはなかったっすからねぇ。てか、イビスの初期モデルって改めてすんごいカメラだと言うことがよーく分かりました(笑。ただし、ベラの沈胴がスプリング式でなくなってるのはわずかな後退と言えま。 | |
デザインは後期のイビス44に近いもの。沈胴なのでレンズは初期のイビスと同じ75mm F9なんでしょうが、カメラにはなーんも表記がないので分かりませ〜ん。M.マラヴォルティ氏の『LE FERRANIA』にもカメラの紹介はありますが、スペックの記載はありません。てゆーか、シャッタースピードが1/50−1/100となってますが、これは誤記。でも、一応それによると55年発売となっていますが、ま、これも話半分に聞いておくのが吉。 |
フェラーニア 3M・ヴェラマチック オビエッティーヴォ 40mm F8 |
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これまた派手な色使いのカメラですが、フェラーニアが3M傘下に入った64年に作られた簡易カメラですになります。時代を反映してか、水色にオレンジと言う随分大胆なカラーになってますが、64年の日本で、こんなすごい色のカメラってあったでしょうかね。ちょっと思い浮かびません。と言うことは、時代を反映ではなく、色に関しては10年先取りしているかな。ちなみに、しばらくすると「Ferrania」の名が消えてフィルムさえも「3M」名だけになっちゃいます。 | |
レンズはお決まりの単玉で、「Obiettivo」とはパンフォーカスを示すイタリア語で、事実フォーカシングは固定になってます。絞りは晴れと曇りの2つ「。曇り」はf8ですが、「晴れ」は一体fいくつなのかサッパシ分かりませんが、まあ、多分f11程度なんでしょう。シャッターは単速で、1/100秒程度。フィルムは126インスタマチックを使用しますので、ASA100ないし200になるはずですから、さすがにf8の暗いレンズでも、日中ではかなりオーバーになってしまいます。 | |
裏蓋の開閉は向かって左横下の爪を押し上げておこないますが、ヒンジもプラスチックなだけに40年も経った今では折れそうで怖いですね。これはストラップの取り付け部分も同じで、ここに付けたら危険極まりないですが、80年代後半-90年代半ばのイタリア製品のプラスチックの貧弱さに比べると、60年代のものはかえってしっかりしているように思えます。ランチア・デルタの内装のプラ・パーツの割れ易さと言ったら…。 | |
それはそうと、「Ferrania」の名は70-80年代にはフィルムからも消えてしまいますが、面白いことに90年代後半から復活します。フェラーニア・ソラリス(Solaris)ブランドでフィルムが売られていますが、面白いことに、同ブランドでコンパクトデジカメもいくつか売られています。でも、08年半ばまで販売されていた126インスタマチックフィルムは、最後の砦となっていたフェラーニアもついに生産終了。む、無念。 |
フェラーニア・エウラ 75mm F8 |
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さーて、今度はいささか無茶な50年代カメラ、エウラの登場ですよ〜。50年代と言っても、正確には59年発売でして、それにしてはあまりにおこちゃまちっくです。国産でもフジペットというのがありましたが、確実にこのエウラの方が中味はスカスカですよ。参ったか!(←威張るなっちゅーの) でも、こいつは6x6判でかなりデカいので、日本人のおこちゃまのおててでは少々難あり。やはりヨーロッパ人のおこちゃまは手がデカいのだろう(←違う違う)。 |
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ボディは一眼レフ並にデカいのですが、材質はプラスチックなので、えらく軽いんです。そうですねぇ、このカメラの半分以下の大きさのドゥカーティの重さの半分もないっすよ。携帯電話並です。 レンズはネーム不詳の単玉で、一応2mから∞までのフォーカシングができるのはイビスより上です。絞りもf8とf12の二つが付いてます。ここもイビスを超えてますが、鏡胴の右側の爪を上にずらすと、単に小さな穴の空いた黒い板がレンズの後ろに現れるだけなんですがね。 |
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シャッターはやはりエバーセットのギロチンもの。ただ、ボタンが省略されていて、鏡胴脇のレバーを下げるだけですので、どうも「撮るぞ」と言う気合が入りません。しかもバルブも省略。1/30秒程度の真正単速とは、恐れ入谷の鬼子母神です。 巻上げは底部の向かって左にあるノブを回す赤窓式。反対側のノブは裏蓋ロックの解除用のもの。しかし、裏蓋に接眼レンズが付いているのはこのカメラだけでしょ。 |
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いやはや、それにしても写真を撮る気にさせないカメラと言うのもある意味すごいですね。そのくせ、右のように立派なケースにセットが詰め込まれて販売されてたみたいで、一体全体どういった層をターゲットにしてたのでしょうね。マジでおこちゃま向けだったんでしょうかね? |
フェラーニア 3M 3035 カラー・イスコナー 45mm F2.8 |
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フェラーニアが3M傘下に入る前から、ちょっと手の込んだ35mmカメラはドイツでOEM生産されていましたが、この“3035”もMade in W.Germanyの刻印が底蓋に見られます。3035の生産年は69年で、この時のフェラーニア3Mの35mmカメラは、名前ではなく番号が使われていまして、ラピッドフィルムの10XX番台に対し135フィルムでは30XX番台になります。下二桁の番号が若い物ほどグレードは下がりまして、3000シリーズの最高グレードの3055は距離計+CdS露出計が備わっていました。この3035は中堅モデルで、セレン光式露出計を組み込んだタイプになります。 | |
ボディはヴェラマチックのような見た目の安っぽさは見られませんが、手にしてみると同レベルの日本製のファミリーカメラに比べて妙に軽いです。軍艦部と底蓋が金属製のカバーのために騙されてしまいましたが、本体はアルミダイキャストではなくて、プラスチック製なんですよ。おかげで、相当生産コストは抑えられているのでしょうが、「カメラ=高級品」みたいな60年代の日本人的な発想ではこうした大胆なことはできなかったでしょうね。日本では70年代から、本体が金属でカバーがプラスチックを採用するメーカーが増えましたが、ヨーロッパのファミリーカメラは逆のパターンなんですね。 | |
レンズはイスコ・ゴッティンゲンのカラー・イスコナー。シアンコーティングが施された3枚玉で、なかなか良く写ります。絞りはf2.8〜f22まで7段階で、シャッターはB.1/30〜1/300秒までの5速ですから、通常の撮影には問題はありません。ただし、露出計は鏡胴側のシャッター・絞りリングには連動しておらず、軍艦部上部のダイアルを回転させ針を合わせ、その状態での絞りとシャッターの数値の組み合わせを選んで鏡胴側のリングを回すことになります。 ヘリコイドリングは先端になりますが、もちろん目測式です。 |
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ファインダーは前から見るとシアンコートされていて、ブライトフレームが見られます。アイピース側から覗くと画面がマゼンタがかって見え、フレームが白っぽく浮き上がっています。採光式ではないので、どうしてもブライトフレームがはっきりとはしませんが、充分使える範囲内です。 このカメラもリンスのシリーズと同様に巻き上げレバーが軍艦部下に埋め込まれていて、スッキリした印象になっていますが、やはりシャッターボタンもボディ前面に持って行ったのがそれをまた助けていますね。しかし、リンスのような前から押込むタイプではなくて、より簡潔な仕組みのレバーを押し下げるタイプになってしまったのはちょっと残念です。まあ、トプコンも高級機のREスーパーの前押しボタンを、廉価版のUNIでは前に付いていても押し下げ式に変えていましたね。 |